wiggling

ロボとミリのwigglingのレビュー・感想・評価

ロボとミリ(2011年製作の映画)
-
同監督作品『アレノ』と同様に「何処にも辿り着けないふたり」がテーマ。故障で廃棄されたロボット(柄本佑)と役立たずのデリヘル嬢のミリ(田村愛)が出会い、夜の渋谷をよるべなく彷徨う小さな物語。
『アレノ』はあまり好みではなかったけど、本作はもう絶望的に好き。愛おしい系の作品です。

ロボは芸人系ロボットだったようで、人間を喜ばせる事に執着する。そしてダンスがめちゃくちゃ上手い。ミリは赤ん坊の頃にコインロッカーに捨てられた過去を持つ。二人とも捨てられた傷を抱えてるんですね。ミリがロボを拾ったのは、そんな古傷が疼いたせいもあるんだろうな。

一夜を彷徨って過ごす中で反発やすれ違いやが多いんだが、わずかだけど淡い幸せもあるんですね。そんな小さな希望のカケラが、この容赦のない世界で生きるための大きな力になるんだ。
ただそれだけだと結構ありきたりなお話で、本作は震災直後の暗い渋谷で撮影されたってのが大きなポイントなんです。渋谷が庭だった自分には馴染み深い場所ばかりなんだけど、暗さのせいで自分が知らない表情を見せてるんですね。この知ってる筈の知らない場所感が、この物語に豊かさを与えてるように感じた。

エンドロールでムーンライダーズ「僕は走って灰になる」が流れたのも驚きだった。昔大好きだったアルバム「ANIMAL INDEX」の曲で、その事をすっかり忘れてて時が巻き戻される感覚があったんですよ。うわーっ!と叫びそうになった。

上映される事が少ない作品を偶然鑑賞し、その中にすごく個人的な奇跡がいくつも入ってるという、ちょっと信じられない鑑賞体験でした。これだから映画はやめられない。
wiggling

wiggling