心にじわじわと染み込んでくるような、邦画の良さが詰まった良作。一見静かな空気のなかに、登場人物たちの抑圧された色んな気持ちが渦巻いているような独特の雰囲気がすごく好きです。
とにかくキャスト陣が素晴らしくて、主演のオダギリジョーと蒼井優はもちろんのこと、主要人物からちょっとした脇役まで見事にはまり役で、なんだか函館に行けばこの人たちに会えるんじゃないかな、今もどこかで生活してるんじゃないかな、と思うほど作品の世界に溶け込む自然さがあった。オダギリジョーの「笑っていない笑顔」は上手すぎてゾッとしてしまうくらいだし、普段はどんなに可愛くてもメンヘラなキャラクターは苦手なのだけど、本作の蒼井優は不思議と好きになれた。殺風景な景色が多い中、オレンジ色の街灯に照らされた夜の景色がすごく綺麗に見えて、ポスターになっている自転車二人乗りのシーンはとてもロマンチック。ちなみに一番好きなのは白岩が聡を試合に誘うシーンなんだけど、あの「周りがうるさいから相手の耳元に顔を近づけて、尚且ついつもより少し大きめの声で話す」オダギリジョーがかっこよすぎて思わず心臓ばくばくしてしまったよ…細かすぎて誰にも伝わらなさそうだけれど…！
普通に生きていくつもりだったのに、いつのまにか普通じゃなくなってる。すごくよく分かる。普通って難しい、そもそも普通って何なのか。人それぞれ何かしらを抱えて生きていて、これからも生きていかなきゃいけなくて。そんな窮屈で息苦しい思いを少しだけ和らげてくれるような、ほっと一息つかせてくれるような、ゆったりした、それでいて芯のある、素敵な作品でした。
