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グッバイ、サマーのMikiMickleのレビュー・感想・評価

グッバイ、サマー(2015年製作の映画)
4.2
原題『Microbe et Garoil』微生物とガソリン。
ミシェル・ゴンドリー監督の自伝的青春映画。

14歳のダニエル。小柄で、くるんとした長い髪から、よく女の子に間違われる少年。いじめっこからはミクロとからかわれ、家には過干渉な母(オドレイ・トゥトゥ)やドパンクな兄。同級生に恋しているものの幼馴染みのような関係で… 自分にも自信がなく、でも絵が大好きで画家になる事を夢見る悩み多き少年。

そんな彼のクラスに転校してきたテオ。
MJのスリラーの赤いジャケットと青いジャージを常に身に纏い、歯に衣着せぬ発言と目立ちたがりとも思えるような言動で浮きまくる変わり者。
父は骨董商で、テオは根っからの機械オタク。改造したヘンテコ自転車を乗り回している。

他のだれでもない、ちょっと外れ者のふたり。家族に悩みを持つふたり。そんな彼らが親友になるのは、あっという間だった。

遂に訪れた夏休み。
テオの親の駒使いで訪れた廃品回収所でたまたま見つけた芝刈機のモーター。
二人は、廃材を毎日毎日集め、試行錯誤して一生懸命に必死に必死に、そのモーターを使った“動くログハウス”を作り上げるのだ。
そして、それに乗って、僕らの夢の乗り物に乗って、二人きりの旅に出る。
クソみたいな日常から出るために。


この映画は青春映画だ。
多感な思春期の、ロードムービーだ。

なぜ、ダニエルが長い髪をしているかというと、“個性”を持ちたいから。でも、普通でいたい。でも、普通でありたくない。その葛藤…。
それって、青春時代になかったかな?
私はあった。
人と違いたいという気持ちと、それによってうまく溶け込めない現状と、皆から浮くのは怖いし。それでも自分だって思いと、寂しさと。そんな気持ちがあった中学生時代。だから、ダニエルの気持ちが、痛いほどよくわかる。中途半端な変わり者みたいな。

それに比べて、テオの個性の強さ。オンリーな強烈な個性。人の事なんて気にしない‼ ダニエルにとったら、親友でもあるけど、憧れもある。嫉妬も多分ある。

でも、テオにも、苦しみがある。親からも全く認められないという現実と、貧しさと、家の手伝いをしてオイル臭いことから“ガソリン”と同級生からはバカにされ、作ったものも誰からも認められない… そんな彼に初めて興味を持ってくれたのが、ダニエルだったのだ。
そしてふたりは唯一無二の親友になるのです。

そんな二人が様々な葛藤やすれ違いやアクシデントにぶち当たり、若者故の戸惑いと悩みにぶち当たりつつも、悲しみや切なさの中でも、ウィットと笑いにとんだり、いかにも中学生な会話と行動を繰り広げていきます。

とにかく可愛くてしかたない‼‼胸がキュンキュンする♪中学生男子なんて、中学の時は全然好きじゃなかったけど、大人になって思うのは、可愛いなぁと。

そして、愛に溢れる手作り感‼走るログハウスを作っている時も出来上がったものも、全てが夢と希望がいっぱいに溢れている‼ ログハウスの見た目、アイデア、楽しくて仕方ないっ♪警察にばれないように、ログハウスを装うのです。

ゴンドリー監督がなぜ好きかといったら、そこがイマジネーションの世界だからです‼今回、ゴンドリー作品にしたら、創造性の面でおいたら控えめではありますが、突飛出た彼のアートワークは、やはりキッチュで唯一無二で、楽しくて、トキメキとウキウキ感が止まらなくなるのです♪そこにとめどない愛が詰まってる♪

兄にいじめられながらも描く絵はパンクスだったり、そんな兄に仕返ししたり、もの作りのDIY精神しかり、根底にあるパンク魂を感じます。

14歳の追体験をしたような気持ちになりました。私はもちろん、こんな素敵なものじゃなかったけど、人は誰しも、14歳を経験してきたんだなと、改めて思ったのです。その青春時代はいつか終わるけど、思い出は無限です。
切ないラストに、胸が締め付けられ、余韻がいつまでも残ります。

ゴンドリー版スタンドバイミーと言われるこの作品ですが、スタンドバイミーともまた違った唯一無二のもの‼
可愛すぎるシーンも含めて、恋や友情やアイデンティティーや14歳というどうしようもならない時期の悩み、それを彼ら二人と共に体感してほしい作品。
MikiMickle

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