皿もげ

この世界の片隅にの皿もげのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.0
映画館で見てから何度か見返した作品。
映画→漫画→ドラマの順で見た。
もちろんどれも遜色なく素晴らしかった。
初めて映画を見に行った時、イオンシネマで鑑賞したのだけれど、漫画を前から読んでいた友達はフラッフラになるくらい泣き崩れており、その後イオン内で食べたサーティワンのアイスクリームもまた、リンさんのことが思い出されて涙涙のしょっぱい味であった。
特筆すべきは、のんのハマり役具合、また、コトリンゴの歌声。「悲しくてやりきれない」のカバーが、え?ここで使われるのか、という部分も含めて、素晴らしかった。

今までの戦争をモチーフにした映画とはぜったいに違う。戦争を知らない世代である自分と、戦争を体験しているすずさんが、世代は違えど同じ人間だ、ということを実感する。
悲壮感だけではなく、あの時期の人たちにも日常があったのだということ。
これを見た後は、かわいそう、こわい、貧しい、しんどい、そんな感情だけではなかった。
異常が日常になっていくさま、だけど悲しいことが起きるたびにその異常な現実に気づくさま。
同じ人間だったひとたちが、不条理に貧しくなり自由を奪われ殺される、穏やかなタッチでそれが描かれる。
どの戦争映画よりも自分に近い。
どの戦争映画よりも酷い現実が描かれている。
映画で漫画で語られなかった部分、背景などを町山智浩の有料配信で聞いたのだけど、それを聞くことによって、より、ああ、と思えたところがあったので、興味のある方は聞いて、この映画を見てほしい。
何度も見たいと思う。
皿もげ

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