ヤンデル

この世界の片隅にのヤンデルのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
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・すずさんが天井板を木目でなぞるシーンがあるが、焼夷弾が落ちるシーンでは天井板がなくなっている。これは焼夷弾が天上裏で留まって消火しにくくなることを防ぐため。実際、焼夷弾が家の床に落ちたため、消火に成功している。

・パラシュートつきの爆弾のようなものが米軍機から落とされるが、これは機雷であり、戦艦大和などが動きにくくするために海に浮かばせる爆弾である。

・父親の入院する病院でハルミが出会う負傷兵は掃海挺の乗組員をして怪我をしている。掃海とは機雷を除くために敢えて爆発させる作業でかなり危険が伴った。

・ハチマキをして女学生たちが歌って行進するシーンがあるが、これは学校報国隊と呼ばれる、工場で働く団体を示している。歌はサトウハチロー作詞「勝利の日まで」(主題歌の「悲しくてやりきれない」もサトウハチロー)。彼女たちの多くは工場への爆撃と共に犠牲になった。

・ハルミたちが犠牲になった時限爆弾は、爆弾が落ちたとこに人々が消火や対応に向かおうとしたところでの爆発を狙ったもの。

・原作では、リンと周作が実は恋人同士だったことが描かれる。すずがスケッチのことで憲兵に叱られたあと、周作からもらったノートは端が切り取られている。これは周作が切れ端をリンに渡していたため。

・広島と呉はそう遠くないが、当時は嫁ぐと嫁はそうそう実家に帰れない(盆や正月のみ)ので、「実家に帰ります」という言葉があるように、勝手に実家に帰ることは離縁を覚悟するような感覚だった。

・水兵になった水原は、浦野家に奔放に上がり込むところや、映画館などを水兵らに譲るべき、という描写があるが、これは特殊なことではなく、当時の水兵の特権性を表している。水兵は缶詰やタバコを官給品としてもらっているので、水原はそれを土産にしている。それはいつ死ぬかわからない仕事ということもあり、周作が夜にすずを水原に差し出すことにもつながっている。

・爆撃機がいろとりどりの煙幕を出すために、すずが魅了されるシーンがあるが、これは複数で爆撃した際に自分の機がどこに着弾したか確認して距離を測っていたため、機ごとに色が変えられていたため。

・たんぽぽは綿毛となって別の地に行き、しかしそこで根を張って花を咲かせる、というすずの状況を象徴している。サギは広島にいたころによく見ていたので、故郷への思いの象徴となっている。

・広島原爆後の「朝日町の方は全滅だ」という台詞は遊郭がほとんどリンがいる壊滅したことを示している。

・建物疎開…空襲で火事が燃え広がらないように建物を倒壊させ、別の地方に疎開させた政策。

・モガ…モダンガール。当時先進的な服装をしていた女性たちのこと。
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