カワココ

この世界の片隅にのカワココのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

そこにある世界を切り取る撮影という手法と違って、アニメというのは世界をいちから描かねばならず、そこに描かれているものは全てその作品の為に作られたもので。そういう意味でもこの作品の世界の密度はものすごく高い。描かれた世界という点で、ジブリを超える密度というのはなかなかないと思うのだけど。こんな風に世界が丁寧に丁寧に描き起こされていることで監督が伝えたかったものがとても強く浮き上がっているのだと思う。
圧巻だったのはやはり爆撃のシーンで、特に後半、防空壕の直ぐ側を直撃した暗闇の中の衝撃と轟音は、とても恐ろしいものでした。上空からB29を俯瞰する爆撃の構図からの爆発の場面。海と町を見下ろす高台からの火の海など、印象に残るシーンはいくつもあった。

しかしてこの映画、試されている気がする。たとえば飛行機雲だとか、機銃掃射だとか、当時の事情の知識があるとないとでだいぶ受け取れる情報に違いが出てくるような。なにしろ主人公のすずは徹底的に庶民で、旦那さんも文官だし義父さんも技師だし、日本が戦争でどのようになっているか、俯瞰する視線がまったくないぶん説明も解説もなくて。事情がわかればより深い理解が得られるのだろうな……。

原作にあったエピソードのうち、すずと哲の関係は残ったのにリンと周平の関係がほとんど描かれなかったので、すこしバランスを欠いているというか、そこは惜しいと思いつつも。ノートの背表紙がわかりにくかったり、紅出てくるのが唐突になってしまったな。でもよくまとめたなと関心もしつつ。

もう一度じっくり見るつもり。
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