みはらん

この世界の片隅にのみはらんのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
3.6
夏にたまたま呉に行った時から見たいと思っていた。

鑑賞後から、ずっと胸の奥がちくちく、ずきずきと痛くてたまらない。ずっと、ずっと痛い。
そして好きな人たちに無性に会いたくなった。

胸の奥のつかえはいつとれるだろう。自分の中でうまく消化できなくて、中に入り込んできたまま、それがどこにも行けなくて、苦しい。戦争って苦しい。

隣のお兄さんの涙がエンドロールからずっと止まらなくて、私もせめて泣けたらどんなにか楽だろうと思ったけれども、涙は出なかった。

追記:
もやもやの原因がわかった。
ありがとう、助けてくれた私の友よ。
それは、絶望と希望がいっしょにやって来たからなのです。戦争という絶望の中に、日常で起こる数々の小さな希望。希望が、絶望の中に所々で入り込んで来てしまった。だって、あの旦那さんなによ。ずっとキュンキュンさせられたんだけど!
最後の最後で希望がやって来てくれたのなら、こんなにもやっとしなかっただろう。涙で絶望を流せたかもしれない。
でも、希望はすずの人生のいたるところに散らばっていて、でもそれは絶望の中だった。そして、それってとってもリアル。人生ハッピーエンドなんてないのだ。ハッピーは途中途中でやってくる。泣いては笑い、笑っては泣くのだ。
あのファンタジーな世界の中に、リアルな人生を見せられて、それで私は困ってしまったのでした。

でも、あのコトリンゴの音楽と、ふわっとした絵、のんののんびりとした声、そういうものが合わさって、ツライリアルをファンタジーに包んで見せてくれたから、そこまでツライ気持ちにならなかったのでしょう。

今、じわじわとこの映画の良さを感じ始めている。
大切にしたい一本。
みはらん

みはらん