まぴお

この世界の片隅にのまぴおのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.5
【世界の片隅で気づいたこと】


「生活」をするとは「性」と「食」の連続である。
このどちらが欠けても人の生活はいつか滅びてしまうし未来はない。そしてそれはどの時代であっても切っても切れないもので戦争時代でもその「生活」は生き続けていたのだ。

ところがこれまでの戦争映画はそういった「生活」から遠いところから戦争は悲惨であることを眼前に突きつけてきた。

これはそれまでの戦争映画とは違った「生活」という視点をファンタジーのような見せ方で圧倒的なリアルを描ききった稀有な作品といえるのかもしれない。

人が日常として当たり前だと感じる感覚をこの時代の人達も確実に歩いてきたこと。決して戦争は絵空事でなくリアルな出来事であったこと。そしてその現実を伝えるために生々しく「性」を描き「食」を描いたこと。だから僕はそのエロスに最初、ギョッとした。
あれ?ここまで生々しく描いていいの?この絵柄で?いろんなシーンで自分の性と重ねてドキドキした。純文学といってもまったく遜色のない日常にこんな気持に包まれるとは思いもしなかった。それほど2016年のこの世界の片隅と1945年の世界の片隅は同じ日常だったのだ。

「シンゴジラ」「君の名は」「この世界の片隅で」

改めて1度観ただけでは理解できない
圧倒的な情報量とファンタジーとリアルの融合が際立った作品が口コミでひろがりヒットした流れに繋がった。
映画館で観ることができて非常に幸せでした。


印象的だったのはエンドロールが終わるまで誰一人、立ち上がり帰らなかったこと。そしてクラウドファンディングに参加した人のクレジットが流れているのをみてもっと早くこの作品をしって協力できなかった自分の歯がゆさを感じた。たぶん僕ができることはここで何人かの人にこの作品の良さを伝えて少しでも興味をもってもらうこと。さらに良ければ映画館に足を運んでもらえるようにすることだ。

575本目
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