終演後、この映画のことを考えないようにしようと必死だった。じゃないとその場で嗚咽しそうだったからだ。
これといった派手な展開があるわけではない。
主人公すずの人生とそれにそって生きる人たちの生活を丹念に掬い上げながら、静かに戦前、戦中、戦後を「普通」に生きていく。
昨日または、さっき隣にいた大切な人が突然いなくなる。そんなの普通でいられるわけがない。しかしそれでも凛と笑顔と共に生きていくのだ。ただ、心の奥底には猛烈な怒りがある。「なぜ？」「どうして？」
それを表現する能年玲奈が本当に素晴らしい。なぜ監督がここまでリスクを負って彼女を起用したのかが、よくわかる。彼女じゃなければ、この映画はなりたたなかったのだ。
余りにも素晴らしい点ばかりでまったく咀嚼しきれてないが、僕の心の奥にもこの映画の大きな余韻が熱となって、しっかりと残っているし、残り続けるのだろう
