さやか

この世界の片隅にのさやかのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.8
今年の映画納めはこの映画に決めました:)
観終わったあとの余韻がすごく残る作品で、気持ちだけ70年ほど前の広島まですっと飛んでいってしまった気がします。

広島市で家族と暮らすのほほんとした主人公すずを取り巻く人間模様や、呉市へ嫁いだあとの家族との暮らしを中心に描かれた作品です。すずは劇中で「普通なのがいいところ」だとさまざまなひとから表現されていましたが、もしかしたら「普通」であるということが一番難しいことなのかもしれませんし、人々の心身に戦争の爪痕がさまざまな形で残されていく中でいつまでもありのままだった彼女はとても安心感をもたらす魅力的な存在だったのかもしれないと思います。劇中の旦那さんとすずのやりとりを見ていると、戦時中を過ごした人々も、現代の私たちと同じように各家庭の生活があり、恋愛もしていたんだなと気づかされます。

当たり前にそこにあった人々の豊かな暮らしが徐々に崩されてしまうのが戦争がもたらす強大な影響力です。しかしながら、戦争が激化していく中でも、配給される物資や野草等をうまく活用しながらおいしいお料理を作り、現状を悲観してばかりおらず、だんだんと自由がなくなる中でも日々の生活を豊かに過ごそうとたくましく生きた人々の姿は現代にも通ずるものがあり、この心がけをぜひ見習いたいと思います。

どんな困難に直面しても、どうせうまくいきっこない、といつまでもくさっていてはだめだな、と背中を押された気がします。心が折れそうなときでも、一度落ち込んだあとにすっと立ち上がり、前に向かって突き進んでいける人間でありたいです。笑う門には福来るという言葉もありますが、辛く大変なときこそ笑顔で乗り越えていく力が必要ですね。
さやか

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