いかやき

この世界の片隅にのいかやきのネタバレレビュー・内容・結末

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

気づいたら立川の極上音響上映が最終日だったので急遽レイトショーへ行った。

とりあえず、あの原作の映画化としてはベストなやり方だったのだと強く思う。特に音響面と空襲の描写、色の良さは映画版の強み。あとアキの声が最初ん?ってなりながらもだんだん妙にハマるという彼女らしさがよかった。

ポイントは、「悲惨な戦争ではなく普通の人々の暮らしを」というより、むしろ「悲惨な戦争と普通の人々の暮らしが切り離せない」というところにあるのではないかと思う。不意に訪れる戦争の影とその決定的な深刻化をかわすギャグが入り混じりつつ話が進むという、「まじめ」と「ふまじめ」の間を行ったり来たりする進み方がとても新鮮で、ある種の誠実さを感じさせる。

ただ素晴らしい映画化ではあるものの、やはりそれでも原作には漫画の特性を生かした極めて重要な表現があるんだよなあ、こうの史代すげえよなあと改めて思う。原作を読むと、ヒロインが絵を描くということと、物語の構成、さらに作品自体のメタ的なあり方がうまいことつながって、なるほどなあとなる、はず…。