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この世界の片隅にのxyuchanxのレビュー・感想・評価

この世界の片隅に(2016年製作の映画)
4.0
水彩画のような柔らかさで描かれる暢気で愛らしいすずの日常。バケモノや、座敷わらしのシーンなどファンタジー要素の伏線や、憲兵のシーンなどは楽しかった。

淡い恋や突然の縁談と結婚、呉での新生活。迫りくる戦争の恐ろしさ、日々失われていくもの、前向きに懸命に生きる人々の姿。ひとつひとつが、淡々と描かれる事でかえって痛々しく心に刺さってくる。

大切なものを理不尽に失ったすずの「何がよかったのかわからない」という言葉はずしんと重かった。でもきっと戦争はもっともっと悲惨なものでこの物語に描かれた人々は運が良かったほうだろう。

旦那さんの誠実な優しさが無ければ、もしくは彼までも失っていたら全く違った読後感だったろう。橋の上で出会ったというセリフにはハッとした。

父方の祖父は南洋戦線での負傷がもとで亡くなったらしく会ったことが無い。父が幼いころ原爆が落とされた時には故郷からもキノコ雲が見えたらしい。僕らが生きていられる事も当たり前ではない。

なにより、のん演じるすずの声が本当にピッタリで沁みました。
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