狂い方まで美しい。狂い方まで美しい。いや、狂った姿が最も美しい。火事になって錯乱するお孝さんの姿。もうほとんどこの世の人ではなかった。あの姿、あの姿、美しかった。浮世絵から飛び出してきたようだ。
脳より身体が先に反応した。美だ。これだ。
「から、だらしは無いけれど、たゞ一つ感心なのは惚れる事。お前さん、惚れ方は巧いのね」
「姉さんで可愛がられるのが不足なら、情婦(いろ)でも、鬼にでも、蛇体にでも、何にでも成つてあげましょう。」
やばかったなこの場面。言葉にしたら消えそうだ。真っ暗闇での会話。私じゃだめか、私じゃダメかと迫るお孝。こちとら意地でここまでやってきたんだ。オレンジ色の光に照らされる姿。あなたのため何にでもなってやろうと言ってるんだ。
雪の中
傘なんかさしてやんない
酒を注ぐ手が震えるお孝。初めなぜかと思ったが、部屋に入った時からもう全てわかっていたんだ。葛木のあの言葉を聞いた時崩れるように悲しくて、お孝さんになった思いだったよ。観客の私からすればなんてわかりの悪い葛木さんと思うけれど、お孝さんはちっともそうは思わなかっただろうね。それがまた…
最後は何の因果か…
熊さんが惚れるのは仕方がない。あの意地の悪い様子、それが色っぽくて、悲しげで、悪戯にに可愛くて、すっきりしていて…こんな女になりたいねぇ…こんな女になって気の利いたセリフの一つや二つ言ってみたいよぉ…
逃げるのかと思いきや障子をピシャリと閉め熊さんに迫るところもやびゃかっちゃ…
ごっこ遊びをするところ、私がちーちゃんになりたいわよ。
イラっとしてカンザシを地面に投げつけるのも
「同じく妻」は使える。
高橋恵子さま…素敵すぎる…カッコ良すぎる。
こんなに良いものは外に出すと消えちゃいそうだから心の中に独占したいけど言葉にしないと薄れちゃうもんね。
道のりは長いけど、目指す場所はいつもある。頑張ろう。