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湯を沸かすほどの熱い愛のCinemanのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
5.0
『湯を沸かすほどの熱い愛』
監督:中野量太
出演:宮沢りえ、オダギリ・ジョー、杉咲花他。
2016年公開。

【Story】
銭湯の入口の扉に貼られた張り紙にこう書かれてあります。

湯気のごとく、
店主が蒸発しました。
当分の間、
お湯は沸きません。
         幸の湯

幸野一浩(夫)が「1時間ほどパチンコやってくるわ」と言い残して1年前に家を出てしまったので幸の湯は休業状態。
残された双葉(妻)はパン屋でパートをしながら一人娘の安澄と二人で暮らしている。
そんなある日双葉はステージ4の末期がんの宣告を受けた。

戻らない夫の居所を探偵を使って調べた結果なんと隣町に水商売の女と暮らしていることが分かった。
双葉は一浩の住むアパートに乗り込んだ。

一浩は昔水商売の女を妊娠させたので責任をとるつもりで一緒に暮らし始めたのだが女は一浩と娘を置き去りにして家を出てしまった。
双葉は一浩と幼い娘を引き連れて家に戻った。

同性には面白い奴で許されるかもしれないが一浩の並外れたいい加減さ、常識のなさは女性とくに身内には耐え難い存在だった。
安澄は父親の突然の帰宅、しかも水商売の女性に産ませた幼い少女を連れにやにやしながら舞い戻った父親を快く思っていないが双葉は何もなかったかのように4人での暮らしを始める。
優柔不断で働きの悪い夫に仕事を再開させ、引っ込み思案でいじめにあっている娘を叱咤激励し、夫が連れてきた少女にも仕事を与え自分はパートを辞め4人で銭湯を再開する。

【Trivia & Topics】

*見事な肝っ玉おっかあぶりです。
しっかりもので何があっても大丈夫と常に前向きなおっかあ幸野双葉を演じる宮沢りえがとても見事です。

*次から次へとシリアスでドラマチックな展開が続きますが。
余命二ヶ月の双葉を中心にシビアでサスペンスに溢れた物語をほんわかした語り口で綴る中野量太監督のセンスが素晴らしい。

*みごとにコントラストのとれた家族たち。
はてしなくいい加減な一浩(オダギリ・ジョー)、学校でいじめにあっていることを口に出せない気弱な安澄(杉咲花)、とつぜん父親の家族と一緒に暮らすことになりおどおどする鮎子(伊東蒼)、余命いくばくもないにも関わらず何があっても大丈夫と家族の絆を立て直す双葉(宮沢りえ)、この4人のみごとなコンビネーションで複雑な幸野家の暮らしが語られます。

*複雑にからむ人間関係。
物語がすすむにつれ幸野家の人間関係の複雑さディープさに驚かされます。
いったいこの物語はぼくたちをどこに連れていってくれるのだろう。

*中野量太監督。
商業映画デビューの中野量太監督の嫌味のないすっきりした演出もこの映画の魅力です。
この作品のたった3年前にあの退屈な『沈まない三つの家』を撮った監督とは思えないほどです。

*この作品の受賞歴。
第40回日本アカデミー賞で優秀作品賞、優秀監督賞、優秀脚本賞、最優秀主演女優賞、最優秀助演女優賞、新人俳優賞、6部門受賞作品。

*衝撃のラストシーン。
まさに湯を沸かすほど熱い愛!

【5star rating】
☆☆☆☆☆
(☆印の意味)
☆☆☆☆☆素晴らしい。
☆☆☆☆面白い。
☆☆☆良い。
☆☆どうでも良い。
☆退屈。
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