かえで

湯を沸かすほどの熱い愛のかえでのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
4.3
ずっと公開日を待ちわびていて、我慢できずに公開初日のレイトショーで鑑賞。さまざまな愛で満ち満ちた作品で心がぽかぽかになりました。

余命2ヶ月と宣告を受けた"お母ちゃん"とその家族の物語。個人的には、遺される側よりも死にゆく側に感情移入してしまって、自分が死ぬ時に何を遺せるのかな、と考えてしまった。あんな風に何かを遺したい、と思う大切な人が沢山いて、お母ちゃんは幸せ者だなと思う。でもそれは、彼女が今までそういう生き方をしてきたからで。お母ちゃんは愛され者だけど、でもそれ以上に、誰に対してもとびきりの愛を持って接していた。それが家族であろうと、見ず知らずの人であろうと、自分にとって憎い相手であろうと。だからこそ、皆お母ちゃんのことを好きになる、お母ちゃんのためならば何でもしようと思える。「人に愛されるにはまず自分が精一杯愛すること」とよく言うけれど、お母ちゃんの姿を見て本当にそうだなと思った。

いじめを受けて学校に行きたくないと言う安澄に対して、何が何でも学校に行かせようとするシーンは少しうーん…となってしまった。自分が死ぬことを知っていて、どうしても強くなって欲しいと思う気持ちは当然なのだけれど。とはいえ、制服の取り返し方は全く予想外だったし、杉咲花ちゃん本当によくやったよ…!
この家族が抱える問題があまりに多すぎるのも少しリアリティに欠けるな、とは思ったけれど、些細な伏線もしっかり回収されていたので作品としては素晴らしいと思います。特に、手話とピラミッドのエピソードは泣かずにいられなかった。

先述の杉咲花ちゃんはもちろん、宮沢りえが段々と病に蝕まれてゆく姿は見ていて本当に痛々しく、見事な演技でした。そしてオダギリジョー演じるダメンズの愛おしさよ…!!もう本当にどうしようもなくダメ男なのに、絶妙な加減で憎めない、それどころか可愛いとすら思えてしまう、あのオダギリジョー力…恐ろしいですね…!

予告で「誰も予想できないラスト」とか言われちゃうと色々と考えてしまって、それはもう本当にあらゆる可能性を模索していたので、あのラストはそのうちの1つの予想が見事に的中してしまいました(笑)それでも全身に鳥肌がぶわーーっと立ったのだけど。お母ちゃんからみんなへの愛、みんなからお母ちゃんへの愛。鑑賞後は余韻に浸りながら銭湯へ行きたいなあなんて思いました。
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