なっこ

湯を沸かすほどの熱い愛のなっこのレビュー・感想・評価

湯を沸かすほどの熱い愛(2016年製作の映画)
3.4
見終わってから思い出した、「死ぬまでにしたい10のこと」に似てるって。
癌を宣告されてボロボロの銭湯でひとり泣くシーンの後で「決めた!」という彼女の力強い一言。
残された時間の中でやり切りたいことを決めたんだろうな。お母ちゃんのそんな状況はつゆ知らず電話の向こうにいる娘との何気ない言葉のやりとりが日常的で、あったかくて、涙が出た。

家族って、“あなたとわたし”のふたりから始まる。それは、血の繋がらない他人とも始められるってこと。だって夫婦はもともと他人。
誰かを心底思うのに、血の繋がりはいらない。
心が張り裂けそうなほど心配してるのに、“逃げる”ことを許さない、それこそが大きな愛なんだと思った。

彼女の人生は、余命を知ってから動き出したわけじゃない。
きっとそれ以前も同じように目の前のことに精一杯、その瞬間瞬間で、一番良いと思えることを選択して、後悔しないように生きてきたんだろうな、
誰かのせいにしたりせず。全部受け入れて。

人はひとりで生まれてきてひとりで死んでいく。だからと言って人生の全ての場面で孤独を選ぶ必要はない。

ひとりぼっちが嫌いなのは、誰より独りで生きる辛さを知っているから、きっと周りの誰にもそんな思いをさせたくなかったんだと思う。

孤独を追いかけてはならない。たとえ孤独に追い掛けられ終にはとらわれることがあっても。

いくつものシーンに彼女の好きな情熱の“赤”が印象的に使われていて、それは銭湯の水色のイメージ、もしかしたら娘のイメージかな?との対比が美しかった。
“絆”や繋がり、それを美しいイメージで押し付けてくるものとは違う、分断され(自立した)た“個”の集団であっても、家族と呼ぶことは出来る。

与えられた条件が劣悪なものであっても、どう生きたいのかちゃんと向き合って決めたなら、

誰かを包み込んで熱くするための愛は自分をも包んで、きっと最期に行きたいところへと運んでいってくれるはず。

“あなたはどう生きたい⁇”
そうたずねられた気がした。
なっこ

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