たま

顔のないヒトラーたちのたまのレビュー・感想・評価

顔のないヒトラーたち(2014年製作の映画)
4.5
1958年、若きドイツ人は「アウシュヴィッツ」を知らなかった。

主人公は「評決のとき」のマシュー・マコノヒーを彷彿させる、若きイケメン検事官ヨハン。
正義感の塊のような人物だ。

ジャーナリストのグニルカと、収容所に収監されていたユダヤ人シモンが、元ナチス親衛隊員が、違法に教職に就いていることを検事たちに抗議するも、興味を示したのはヨハンのみだった。

ニュルンベルク裁判で決着をつけたかった当時のドイツ。優先すべきは経済成長。
現在とは違い、負の歴史への隠蔽と沈黙の時代だったことに驚く。

膨大な資料と、被害者からの証言を頼りに捜査を進めていくヨハン。
グロテスクな映像もなく語る場面も無音だけど、その表情から悲惨さが充分過ぎるほど伝わってくる。
ただ、シモンの語る言葉は音を発していた。想像することすら苦痛を伴い、耳を塞ぎたくなるほどの凄惨さだった。

思うように捜査は進まず、尊敬する父やグニルカまでもがナチスに加担していたことを知り、絶望するヨハン。

多くの一般人が煽動されたり、強制されたりして関与していた。

それでも、持ち前の正義感で再び闘うことを決意するヨハン。

こうしてアウシュヴィッツ裁判が始まる。ニュルンベルク裁判とは違い、ドイツ人自身でナチスの罪を裁いたもの。
そこからまた歴史が作られていく。
戦争の被害者意識の強い日本とは大きな違いを感じる。
過去を知らずして前には進めない。

収容者シモンと、ジャーナリストとなった収容所の見張り番グニルカと、検事のヨハンとの異質の友情が良かった。
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