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顔のないヒトラーたちのBOBのレビュー・感想・評価

顔のないヒトラーたち(2014年製作の映画)
3.7
ホロコーストに関わった元ナチス兵をドイツ人自身が裁いた歴史的裁判"フランクフルト・アウシュヴィッツ裁判"に纏わる歴史ドラマ。

1958年フランクフルト。一人のジャーナリストが、アウシュヴィッツ収容所の元親衛隊員が教師として働いていることを告発。若い検事が、アウシュヴィッツの真相に迫る。

「ウソと沈黙をもう終わりにする。」

ナチスの罪と罰。主人公周りのサブストーリーは少々弱いと感じたが、重要な題材を扱った堅実で意義深い歴史ドラマだった。恥ずかしながら、この重大な歴史的事実の存在を、本作で初めて知った。

一番驚いたことは、戦後13年当時のドイツ人の多くが、ホロコーストについて無知だったということ。ドイツ国家が求めていたのは体裁を整えることであり、国にとって不都合な真実を、歴史からも人々の記憶からも消し去ろうとしていた。この裁判がなければ、現在我々がアウシュヴィッツについて常識として知っていることでさえ、世の中に知られることがなかったのかもしれない。そう考えると、本当に恐ろしい。(殺人罪以外は戦後10年で時効を迎え、公的機関には元ナチスが多数所属。)

歴史を語ることの重要性を痛感させられた。戦争裁判の目的は、誰が正義で誰が悪かを裁くこと以上に、真実を公の場に出すことであるという趣旨の言葉が印象的だった。当事者たちが語ろうとしない不都合な真実こそ、歴史からも人々の記憶からも消し去ってはいけない。

"死の天使"として恐れられたアウシュヴィッツ収容所の医師ヨーゼフ・メンゲレ。実験と称した双子の幼女拷問エピソードに驚愕した。あまりの非道っぷりに、言葉を失った。

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