Jeffrey

美わしき歳月のJeffreyのレビュー・感想・評価

美わしき歳月(1955年製作の映画)
3.5
「美わしき歳月」

冒頭、東京田村町の花屋「千草」を経営する娘の桜子と祖母。亡兄の友人の今西ドクトル、キャバレーの太鼓叩き仲尾、鉛工場で働く袴田、交通事故、老紳士、 伝染病研究所、汽車、陸橋、交際。今、複数の男女による青春群像劇が始まる…本作は一九五五年に小林正樹が監督し、松山善三が脚本を務めた戦後の若者たちの姿を綴った青春群像劇で、この度初DVD化され初見したが素晴らしかった。戦後の若者たちのあらゆる愛の形を瑞々しく描いたユーモラスな作風である。少しばかり今までの小林作風とは変わっているような感じがする。


さて、物語は祖母と二人で小さな花屋を営む桜子には、南方で戦死した兄の友人で医者の今西と鉛工場で働く袴田、キャバレーのドラマー仲尾と3人の頼れる存在がいる。ある日、仲尾は母親が病床にある幼なじみの由美子を今西に紹介するが、二人が会っている場面を桜子が偶然目撃し、その仲を誤解してしまう。

本作は冒頭にドラムの音が鳴り響く。そして一台の車が道路を走るファースト・ショットで始まる。その車は一人の老婆を轢きそうになる。降りてきた老人は何かあったら良くないので病院に行きましょうと老婆の行きつけの病院へ行く。カットは変わり、今西と言う若い医師とその病院の院長らしき男性との口喧嘩が写し出されて今西は病院を去って行く。だが、その老婆は今西先生がいないのなら診てもらう必要は無いと言う老婆も病院から出て行ってしまう。

続いて、老婆の娘が経営する花屋へ帰宅するシーンへと変わる。そこへ仲尾と言う男性がやってきて先程の老婆(祖母)と娘の桜子と会話をする。仲尾はクラブに行き、そこで働いている由美子と言う女性とシリアスな会話をする。続いて、昨日交通事故に巻き込まれそうになった祖母と老紳士の二人が再開する。そして会話をする。そしてその老紳士は花屋に日々立ち寄ることになる。

続いて、仲尾が経営するクラブのバーでドラマーとして活躍する彼の描写が写し出される。そこに一人の黒人兵士らしき男性がドラムをいじらせてくれと言い、彼がドラムを叩き始める。仲尾は由美子のもとへ行き立ち話をする(その間クラブの中の外国人が陽気にお酒を飲んだり、音楽を楽しむ描写がカット割りされる)。二人はジャズ音楽に合わせ静かに踊る。そして先程の黒人が由美子と踊らさせてくれと言う仲尾と変わる。

翌日、いつもつるんでいる仲間たちと墓参りへ行く。そこには今西、桜子、袴田、仲尾等がいる。そして袴田と仲尾が喧嘩をする。カットは変わり、祖母と老紳士のデートシーンへと変わる。二人はベンチに座りお見合いの話をする。そして、それぞれの物語が展開されていて行く…と簡単にオープニング話すとこんな感じで、当時の戦争の傷を負いながら懸命に生きようとする若者たちが映し出されている。



いゃ〜小林作品のDVDを十本(そのうち一本は二作品収録なのでトータル十一作品)を今見てきているが、いいね。凄くいい。ってか佐田啓二って男前なのにこの映画に出てくるシーンでへんてこな小学生が被るような帽子をかぶっているのは笑ってしまう。でも結局はハンサムだからかっこいいのだが、何故あんな帽子を選んだのだろうか。

あの河川敷と言うのだろうか、あの場面を今西と桜子が歩きながら会話する場面の美しい風景がすごく印象的だ。それとあのラスト歩道橋の上に子供と一緒に立ち、列車を見送るクライマックスの余韻はたまらない。
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