津軽系こけし

シャザム!の津軽系こけしのレビュー・感想・評価

シャザム!(2019年製作の映画)
4.1
アメリカ文化像バンザイ


【痛快!古典派現代ヒーロー】
古典的ともいえる設定の枠と、ヒーローへの成長劇が痛快。それをアメリカの養子イズム…まあ平たく言ってしまえば家族イズムに帰結させた上で、友情・勝利がてんこ盛りになった昔ながらのヒーロー映画。王道なストーリーなんだけど、それをメタい口ぶりで言いくるめてコメディに昇華してるので古くさい印象は全くない。

悪役が実は正しい云々とか、ヒーローも間違ってるといった現代ヒーロー映画の流行にまるで逆行した作品だ。それこそクリストファーリーヴが空を飛んでいた時代のような王道っぷりである。

しかし、それにしても不純物の多い作品である。

【悪役の否定の不足】
特に今作では悪役が効果的に働けていない。古典王道を貫くのであればそれこそ「キングスマン」のサミュエルLジャクソンのような悪役を設定すればいいのに、今作の悪役マークストロングは王道を貫くヒーローイズムの世界で1人だけ「ジョーカー」をしている。
彼の境遇はまさしく現代ヒーロー映画の善悪では推し量れない悪役像であり、どう考えても勧善懲悪主義じみた古典ヒーローの悪役としては不適切としか思えない。そのため、最も肝心なシークエンスたる悪役を否定するシーンも、かなりこじつけがましい仕上がりになっている。彼の悲劇的な人生を”嫉妬”の一言で言い括ってしまうのはそれこそ”傲慢”というものではないだろうか。

【悪役好きによる余談】
昔から悪役が好きな性分のため、ヒーロー映画にはどうしても完全な悪役の否定を求めてしまう。今作がそういう真面目なものを排斥した”駒の遊戯”ということは弁えた上でも、私は今作が好きにはなれない。このスコアは、マークストロングが父親に復讐するシーンのかっこよさに対する加点である。
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