kkkのk太郎

シャザム!のkkkのk太郎のネタバレレビュー・内容・結末

シャザム!(2019年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

スーパーヒーローが一堂に会するアメコミアクション映画「DCEU」シリーズの第7作にして、魔法の力でスーパーヒーロー”シャザム”に変身する少年ビリーの活躍を描いた『シャザム!』シリーズの第1作。

里親の下を転々としている問題児ビリー・バットソンは不思議な魔術師から力を与えられ、”シャザム”というヒーローに変身出来るようになる。
鼻高々になった彼はそのパワーを私利私欲の為に使うのだが…。

シャザムの力を奪おうとする男、Dr.シヴァナを演じるのは『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』『キングスマン』シリーズのマーク・ストロング。

製作総指揮を務めるのは『ワイルド・スピード』シリーズや『モアナと伝説の海』で知られる俳優、ドウェイン・ジョンソン。

前作『アクアマン』(2018)より始まったDCEU改革。重々しい空気感を一切排し、カラッと明るいお楽しみ袋のような作風へと舵を切り直したこのシリーズなのだが、まさかその2作目でここまで振り切ったものを出してくるとは…っ!!

監督のデイビット・F・サンドバーグは、過去に『ライト/オフ』(2016)や『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)などのホラー映画を制作しているのだが、実はこれらは『アクアマン』の監督を務めたジェームズ・ワンがプロデューサーを務めている。つまり彼、ワンちゃん門下の監督なわけです。
『アクアマン』と『シャザム!』を連続して鑑賞することで、いかにワン組のエンタテインメントに対する理解度が高いのかを思い知らされた。彼らを中心に据えることでシリーズを立て直そうというDCの思惑は完全に成功していると言って良いだろう。

『ダークナイト』(2008)、そして「MCU」の成功によりアメコミ映画からかつてのB級感は無くなった。
一流のバジェットで、大人の鑑賞に耐えうる高品質な作品が次々と制作されている現在。それはそれで結構なことなのだが、一つ大事なことを忘れてやいませんか?
アメコミって元々は子供のためのものだったはず。シリアスだったり政治性が強い作品を否定するつもりはないが、やっぱりヒーロー映画というのは子供たちの胸をドキドキワクワクさせることを第一義にすべきだと思うのです。

その点において、この映画は完全に子供の目線に立った映画作りが為されている。
『E.T.』(1982)や『ネバー・エンディング・ストーリー』(1984)、『ホーム・アローン』(1990)、『スパイキッズ』(2001)、『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)と言った子供映画の系譜を引き継ぎながら、そこに『グレムリン』(1984)や『ゴーストバスターズ』(1984)のような80'sお化け映画の要素をプラス。
そんなファミリーセットの様な建て付けで、「大人になって大暴れ」という、子供にとって一番身近でリアルなファンタジーを臆面もなく真っ正面から描き切っている。
ここまで子供の側に寄り添ったアメコミ映画なんて、久しく作られていなかったと思う。でも、こういう10歳くらいの子供が楽しめるような映画がこのジャンルにおいては一番正解なんじゃない?

前作から、ヒーローやヴィランのコスチュームは原作コミックに準拠するという体制が採られている。『アクアマン』のヴィラン、ブラックマンタのコスチュームなんてもう凄かったんだから。ほとんど『仮面ライダー』。
今回もシャザムのコスチュームはめちゃくちゃ漫画的。原色のスーツに白いマント、胸には光る稲妻マークというほとんどアンパンマンみたいな格好をしている。
スーパーマンはあの赤いホッケーパンツを脱ぎ、バットマンの胸からは黄色いバットマークが消えてしまった。リアル志向を目指すが故なのだろうが、結局ヒーロー映画なんてどこまで行っても荒唐無稽なものなんだから、下手に現実的なデザインにしてしまうと逆にバカっぽく見えてしまう。
中途半端なスタイリッシュさを捨て、漫画的なデザインを貫き通す。本作くらい思い切りの良い姿勢で作られると、ダサさを超えた清々しさが生まれる。ここにこそ漫画映画の楽しさの真髄があるのではないだろうか。

魔法の力に怪力、空まで飛べる。そして友達に力を分け与える事で、みんな一緒にヒーローになれる。こんな能力最高じゃん!!
子供の夢を素直に描いてくれる。この愚直なまでの明快さこそが本作最大の魅力。小難しいことは抜きにしたシンプルな楽しさ。本当にアメコミ映画ってそういうことなんだと思う。

夢の様なスーパーパワーを描く一方で、「親から逸れて孤児になってしまう」という子供が抱える最大の恐怖もまた同時に描かれている。
こういう点をしっかり描けているというのも、制作陣が子供の目線に立って物事を考えていることの証左。
子供向けなエンタメ映画だが、大人たちはどうやったら子供に楽しんでもらえるかを真面目に考えている。だからこそ、子供向けでありながら子供騙しにはなっていない一本筋の通った作品になっているのだ。

子供をターゲットにした作品だが、ちゃんと大人の鑑賞に耐えうる娯楽性を有しているのもポイント。特にコメディ描写がとっても楽しい♪
普段はクールなビリーだが、シャザムに変身すると途端にバカっぽくなっちゃう。お前大人状態の方が知能指数低いだろっ!?
シャザムを演じるザッカリー・リーヴァイの、圧倒的なおバカ感が素晴らしく、彼の演技の見事さがこの映画全体の魅力をグッと底上げしている。

大人だからこそ笑えるポイントもたくさん。
特に、舞台をフィラデルフィアに設定したことにより生まれた『ロッキー』(1976)へのリファレンスには腹を抱えて笑っちゃった🤣
あの名曲「アイ・オブ・ザ・タイガー」を、まさかのロッキー・ステップで、あんな馬鹿馬鹿しいギャグとして用いるとは!!もう本当バカすぎて愛らしすぎる💕💕

ビリーとフレディの仲の良さというのも本作の大きなチャーム。2人で能力の研究をするところも大好きなんだけど、個人的に気に入っているのはエンディング。
最後の最後、フレディの為にビリーが連れてきたのはまさかの…!
いやもう本当フレディ良かったねぇ〜…。このシーンで初めて、DCがユニバース化して良かったと思えた。彼の顔を映さずにパッとスタッフロールに移行するという切れ味も見事。割とマジで、アメコミ映画史に残る最高のエンディングだと思う。ヒーローなんてのは子供を喜ばしてナンボ!!

魔術師ジジイがビリーを選んだのは切迫詰まっていたからであり、清い心とか全然関係なかったというのもなんか良いですよね。大事なのはヒーローになることではなく、ヒーローになった後にどう振る舞うか。
「大いなる力には、大いなる責任が伴う」ということをセリフではなく彼の行動によって表している点なんかはとってもスマート。
そういえば『スパイダーマン』(2002)でシャザムに関する小ネタが仕込まれていたけど、今回の物語がスパイダーマン的だったのはそれに対する返答という意味も込められているのかな?

敵に魅力が無いというDCEUの弱点は、残念ながら今回も克服出来ていなかった。マーク・ストロングは魅力的な俳優だがキャラクターに面白みがない。
また、せっかくの”七つの大罪”もデザイン的な面白みに欠けている。結局最後までどれがどれなのか判別できなかった。

ストーリーは面白いのだが、ちょっと一歩調子だったのもマイナス要因。また、132分という長尺を持て余しているようにも感じた。子供向けの映画なんだから、ランタイムも100分程度に収めるべきだったのではないだろうか。

完璧な映画とは言わないが、理想的なアメコミ映画であったことは間違いない。
マーベルにしろDCにしろ、もっと子供目線に立った映画をどんどん作るべき。オタク向けの作品ばかりじゃ、今は良くても今後どんどん先細っていきますよ。
『アクアマン』そして『シャザム!』…。新生DCEU良いじゃないっ!!👍

※吹き替え版はゴミ。
ビリーの吹き替えを務めた緒方恵美さんは演じている俳優さんと声の質が似ていて素晴らしいと思った。これは吹き替えガチャ大当たりか…!と思ったらシャザムの声が…🌀
マジで家で寝ていてくれ菅田将暉。1,000円あげるからさ。
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