ヨッシー

シャザム!のヨッシーのレビュー・感想・評価

シャザム!(2019年製作の映画)
3.8
『史上最強の悪ガキヒーロー爆誕!』

DCコミックスのスーパーヒーロー『シャザム』の実写映画作品にして、DC エクステンデッド・ユニバースの第7弾。

「シャザム!」と唱えることでスーパーパワーを持つ大人の姿に変身する能力を与えられた少年ビリー・バットソンが悪の魔術師に立ち向かう。

監督は『ライト/オフ』『アナベル 死霊人形の誕生』のデヴィッド・F・サンドバーグ』
出演はザッカリー・リヴァイ、マーク・ストロング、アッシャー・エンジェルなど。

字幕版と吹き替え版で1回ずつ鑑賞。

『アクアマン』の大ヒットで勢いとつけつつあるDCEU。そんな中『アクアマン』とはかなり対称的な新作となったのが今回の『シャザム』。

なんと言っても今回の『シャザム』の特徴は主人公が14歳の少年であり、その少年が大人の姿に変身してヒーローになるということ。
年齢的には『スパイダーマン:ホームカミング』のピーター・パーカーより下の最年少。そんな少年ビリーの子供らしさ全開で、それを大人の姿を演じるザッカリー・リヴァイの演技もまた実物。

物語の前半はヒーロー映画の1発目らしく、ビリーが自身の能力を試す流れになるが、そこが他のヒーロー映画とは一味違う楽しさがある。
他のヒーロー達はあくまで実験や訓練として(一応真面目に)能力を試すのに比べ、ビリーはまさしく新しいオモチャを手に入れた子供のようにスーパーパワーを遊び感覚で試していくのが最高に面白い🤣
クイーンの名曲『don't stop Me now』に乗せてビリーとフレディがパワーを次々と試して行くシーンは本作で1番好きなシーン。

さらに、その実験の中で子供ならではの思慮の浅さ、無邪気ゆえの危険さも見える。例えば、コンビニで強盗に撃たれた時、フレディが「スーツが防弾なだけで顔なら効くんじゃね?」と言って顔を撃たせるんだけど、本当に効いたらどうすんだよ!と突っ込まずにはいられないシーンがある。こういった子供ならではの後先考えない危うさが面白いところ。

ビリー以外の子供達も個性豊かでどのキャラも面白い。そんな子供達とビリーが家族になっていくドラマ性が本作の魅力でもある。
前作の『アクアマン』はストーリーは多少雑ではあるが、怒涛のアクションの連続で凄まじいテンポで話を進めていくのに比べると、今回の『シャザム』は非常に対称的で正直テンポは緩めでアクションも控えめ。でも、その分ドラマ性を重視した作りになっている。

悪役のマーク・ストロング演じるシヴァナもヒーローのビリーとは「選ばれた者と選ばれなかった者」「大人と子供」「家族を求める者と捨てた者」とうまく対比ができている。
彼が最初に力を使って自分の家族を殺すところはモンスターパニックホラー的な演出も良かったし、所々でホラー映画的な演出があるのは『アクアマン』に引き続きホラー映画監督だからかな。

あと、今回はDCの単独作では珍しく他のヒーローとのクロスオーバーが比較的多めなのもDCEUを追いかけてきた身としてはちょっと嬉しいところ😃
ただ、欲を言えば単に他のヒーローの名前を出すだけじゃなくて、もう少しストーリー的な繋がりを作って欲しかった。

他にもちょっと不満も多い作品で、特に前述したビリーが能力を試してるシーンはすごく面白いんだけど、予告編で見せ過ぎたせいで予告編以上のものがほとんどなくてかなり残念。

また、ヒーロー映画としてはちょっと物足りない部分が多い。
前作『アクアマン』がヒーロー映画的なケレン味、カッコイイ見せ場の連続だったのに比べ、『シャザム』は正直ヒーロー的なかっこよさに欠ける。中身が14歳のガキンチョだからしょうがないっちゃしょうがないんだけど、もうちょっと締まらなかったかなぁ。
アクションもなんだかモタモタしてる感じがあって、特に終盤の戦いは子供達が拐われて、それを救出したらまたすぐに拐われてまた救出といった感じで正直グダグダな感じがした。
それとスーパーマン級のトンデモ能力をたくさん持ってる割にはあんまりそれを生かしたアクションも少ないし、意外と周りの物を壊したりしないから迫力に欠ける。まあ、中身が14歳の素人だからあんまり能力はともかく超人的な戦闘スキルを見せたら違和感があるから難しいバランスだとは思うけど。

あとは、今回はビリーの家族を作る物語ではあるけど、彼がヒーローになる物語としてはイマイチかな。中盤のバスのシーンはビリーがふざけて能力を使ったせいで周りの人を巻き込んでしまったわけだから、ここからスパイダーマンのように“大いなる力には大いなる責任が伴う”という事を学んで行く流れになるかと思いきや特にその件に関しては(少なくとも今回は)進展しない。もしかしたら次回作以降にビリーのヒーローとしての責任を身につけていく話になるかもしれないけど、今回はちょっと消化不足。

ただ、こんな細かい欠点より1番の問題は吹き替え版のシャザムの声優を務めた菅田将暉の演技。
かなり棒読みなところもちょいちょいあるし、なによりも声が致命的に合ってない。話題作りに必死なのはわかるし、僕も『シャザム』を日本でもヒットさせてDCEUをもっと盛り上げて欲しいけど、だからってこのキャスティングは酷すぎる。菅田将暉が声優向いてないのは『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で分かったでしょ。吹き替えの監修をした福田雄一監督は正直今回の件で見損なった。一応他の声優は文句なしだったけど、肝心の主役が喋ってる時が1番きついのは最悪だからね。

とは言え、1本の映画としては十分に面白いし、『アクアマン』に続いて今後のDCEUにも期待ができる出来だった。
是非とも今後の作品もヒットして『ジャスティス・リーグ』で集結して欲しい。
ヨッシー

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