てつこてつ

スティーヴン・キング ファミリー・シークレットのてつこてつのレビュー・感想・評価

3.4
スティーブン・キング原作物を本人が脚色まで担当。彼の映像化作品では珍しく、超常現象が描かれない、ホラーというよりサイコスリラーの持ち味が存分に出ているなかなかの良作だと思う。キングの原作を幾つか読んだ事がある方なら共感いただけると思うが、「ジェラルドのゲーム」なんかもそうだが、キングはキャラクターの心情の描写がとても細かく巧み。

25年もの間連れ添ったオシドリ夫婦。立派に成人した子供が二人いて、端から見てもアメリカの典型的な幸せな家族。だが、実はその夫が世間を騒がせるシリアルキラーだと知った妻は・・。

アイディアが面白いし、妻が、あれだけ愛情深い夫が本当にシリアルキラーなのか否かの疑心暗鬼に駆られるストーリーかと思いきや、比較的序盤に夫がその事実を認めるという意外性有り。また、何故、彼が殺人を犯すようになったかの説明部分も説得性が十分。

では、それ以降の流れで、妻がいつか秘密を知ってしまった夫に殺されるのか否かのサスペンスに転じるかと思いきや、結構、個人的にはビックリの展開となり良い意味で裏切られた。

何年連れ添おうが、夫婦は結局のところ赤の他人・・という真理をキングならではのテイスト(クセ)で上手く描いていると思う。最後の病室のシーンも、あそこに登場する二人のキャラクターの心情が絶妙に表現されていて個人的には好きな終わり方。

主役のジョーン・アレンの演技が秀逸。話の終盤に向けてどんどん美しく妖艶さを増していくという演出も上手い。

夫妻が住む家の造形が、二回も「悪魔の棲む家」として映画化されている、アメリカではあまりにも有名なアミティビル一家殺害事件の舞台となった特徴的な屋根や窓の形を模しているのは製作側のオマージュなのかな?
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