イチロヲ

のけぞる女のイチロヲのレビュー・感想・評価

のけぞる女(1980年製作の映画)
4.0
護送車から脱出した殺人犯の女性(風間舞子)が、共犯者である亡き夫(高橋明)の幻影を抱えたまま、性の暴走と逃避を同時多発的に繰り広げていく。孤立無援の逃亡生活を余儀なくされた女性の数奇な運命を綴っている、日活ロマンポルノ。

本作の主人公は、夫の幻影を抱えていることにより「無自覚的なセックス・マシーン」に変貌している女性として登場。性の暴走を抑制できなくなった女の性(さが)を、ホラー・テイストを交えながら描写していく。

前半部の逃亡劇では「食糧をガッツリ食べて、セックスをガッツリしまくる」という、極めて本能的な行動をクロースアップ。そして私娼窟に身を潜める後半部では、吉川遊士が経営する店で、警察官(藤巻源)のオキニにされてしまう。

いわゆるひとつの「女であることを武器にして世渡りする系統」の作品だが、警察官側(権力側)が絆されるわけではなく、物語は退廃的な方向へと進行する。「女の敗北の美学をロマンポルノで徹底的にやったらこうなった」とも称するべき逸品。
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