メガネン

残穢 住んではいけない部屋のメガネンのレビュー・感想・評価

4.0
ホラーとしては実話怪談蒐の要素があると思うのですが、こういうモキュメンタリー風のホラーは最近の日本のホラー小説ではメインストリームになりつつあります。その先取りをしていたとしたら、原作者の小野不由美さんの慧眼に驚きます。

非常に怖い映画です。
しかし、それはスプラッターやグロとか、ショッキングシーンとかそういうものへの感情ではありません。
家の中で聞きなれない物音を耳にすることや、いつ置いたか分からない置き物があるとか、日々我々は特に気にしていないけれど、あれ?と思う瞬間を持っていると思います。この作品はそれら、なにげないあれ?に意味を与えます。
それになにを思うにせよ、この映画を観た後では、それを不気味に感じる度合いが段違いでしょう。

つまり、この映画はその映画そのものが、怖さの素になるのです。
日常生活に侵食してくる作品。
それはホラーとしては純粋に高品質です。

演出や演技も自然でその分あり得そうなことばかりでかなり嫌な雰囲気です。
そう、嫌な雰囲気なのです。
それが常に見ている間付き纏います。

ところで、自分はこの作品の原作「残穢」を読んでいません。読みたかったのですが、なぜかiBooksでもKindleでも配信されておらず、本もなかなか売っていないので、読めていないのです。
なのですが、自分はこの作品の中のいくつかの描写を知っている気がしました。
例えば、縁の下の猫と話す老婆の話が、実は猫ではないのではないかと言うことが判明する一連の流れを、僕は視聴している間にその結果を知っていました。
そう言うような、知らないはずなのに、この作品の展開で知っている部分がいくつかありました。
なぜなのかわかりませんが、読んだ事のないはずの本の内容を知っている気がすると言う経験をされた方はおられますか?