Kitty

残穢 住んではいけない部屋のKittyのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

Jホラーブームの作品が帰ってきたような感覚。素晴らしかった。ホラーとしては物足りなさを感じるが、それも作品の特性であろう。
演出もストーリーも徹底した心霊実話テイスト。Jホラーブーム以来、長編作品でここまで徹底した心霊実話テイストの作品も本当に珍しいと思う。
ラストにはそれが破られ、幽霊が姿を表すのもJホラーとしてはお約束の流れを汲んでいると思う。
そして終始不気味さを感じるストーリーもミステリーとして非常に面白い。
ただ、たしかに怖い作品ではあるのだが、あくまで自分の感覚として、どこか怖くなりきらない感じがした。
その原因は2つあり、原作がそもそも心霊実話感を非常に強く出したフェイクドキュメンタリー的な小説なので、1つは人物たちと死の距離感が遠いこと。人物の死というものが土地にまつわる歴史の中にしか出てこないので、人物たちが調査を進める動機に緊急性が発生せず、物語に緊張感が生まれづらい。恐らく、この映画のラスト以降に慣れ親しんできた緊張感のあるホラーになると思われる。
もう1つの原因は、あからさまに不気味な動き(エフェクト付き)をする霊、この霊が音を立ててしまうことにあると思われる。音をたてることによって、その霊がその場に実体を持って存在しているという客側の認識が強くなってしまうため、実在感を多少なりとも付加してしまったしてしまったのではないか。このタイプの霊描写で神がかり的に怖くなっているのは黒沢清の「回路」だろう。秀逸な点のひとつに、この作品の霊は決して音をたてない(声は出すけど)。足し算と引き算の割合が絶妙なのだ。
それを踏まえると、今回の作品の霊は足し算の産物のように思われる。その点が霊を完全なる創作上の生物に追いやったのかと思う。
いろいろ言ったが、心霊実話テイストホラーとして秀逸な出来だと思うから総合評価は高いのは事実で、この路線の作品がもっと増えることを願う。
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