ダイナ

イコライザー2のダイナのネタバレレビュー・内容・結末

イコライザー2(2018年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

面白かったけど、前作と比べるとちょっと物足りなさや気になる点が多くなった印象。

前作は個人的に大好きな映画だった。魅力の一つに身近な道具を利用した戦闘が挙げられる。前作の最終対決の舞台がホームセンターという道具が盛りだくさんの場所であったのも、その魅力を最大限に引き出すのに一役買っていた。2ではマッコールはタクシー運転手(評価システムはUberってやつかな?)という姿の裏で正義の処刑人として暗躍する。ホームセンター店員から離れ違う姿に転身したという部分をあらすじで知った際は、上記に上げた魅力が無くなってしまうのか?という懸念が湧いた。結果から言えば、前作と比較して薄い印象になったものの、身近な道具を利用しての戦闘術(クレカ・小麦粉・銛?っぽいの)要素は引き継がれていたので面白く見れたし安心もした。

今作においてはマッコールの内面、人間関係に迫るストーリーとなっていたように思う。前作ではマッコールの過去、というか彼自身については匂わす程度の描写で、虐げられる無実の弱者へ勇気を与え、裏で甘い汁を吸う悪人に対し鉄槌を下す様がメインとなったストーリーであった。今作は、前作通して描かれた絶えることのない悪者達へ正義を執行すると決意した後の話で、マッコール全盛期=元CIAの頃の仲間や、現住所での友人関係(親子っぽい所もある)等、外面より内面にフィーチャーしているストーリーの印象を受けた。

今作で好きな、印象に残ったシーンを2つ挙げる。
①マイルズへの説教
前述した友人関係に当たるマイルズという青年(大学生?)。絵描きという夢を持ちながらもどこか自分を信じ切れていない所が、どことなく前作の警備員志望のラルフィを彷彿とさせる。そんなマイルズが悪い集団との付き合いの中で「拳銃をぶっ放してこい」と命令される訳だがマッコールはそれを阻止。見張りを容赦なくなぎ倒し「そいつの父親だ」とオーラで周囲を威圧しつつマイルズを連れ出す。その後の一階踊り場でのマイルズへの説教。前作の汚職警官達への説教も刺さったが、ここの人殺しへの覚悟を問うシーンがとても迫力があった。また力で制することの多いマッコールが今作においても言葉で説得する、柔と剛を併せ持つ様が健在していることも確認できて良かった。

②宣戦布告シーン。
今作では敵が「イコライザー」、かつての同僚である。敵の中でもメイン格となるデイヴ・ヨークについて、途中までの印象、マッコールと一緒にスーザン殺しの捜査をしてくれる良き相棒的なポジションで、後に共闘シーン来るか?とか続編が出た際の仲間ポジションになるのかもと期待したが、蓋を開けてみれば敵であった。デイヴの家庭を映すシーン。娘と戯れるデイヴ、妻が玄関先に客を迎えに行った際、妻からの返事が無い所で、序盤の夫婦殺人シーンが自分の脳裏にフラッシュバックする。「頼れる仲間、またその家族が殺される」という危機感を個人的に感じたのも束の間、奥さんとマッコールが現れた時はホッとしたもんだが、後の犯人バレは不意を突かれた。その後のデイヴ宅前のシーン、ここがとても気に入っている。敵の像に確信を得たマッコールが「お前ら全員殺す」と発言。こんな発言が日中の住宅街でされているそのギャップが面白かった。日中の住宅街でマッコールとかつての仲間が見合うように対峙しつつ、お互いへの殺意をそこで確信しながらマッコールの宣戦布告によって火蓋が静かに切られる。後ろで車で出かけようとするデイヴの奥さんと娘達に異変に気付かれないように努めるイコライザー達の異様な雰囲気もたまらない。

気になった所をいくつか挙げる。
マッコールが鉄槌を下す際のしきたり。前作では悪への鉄槌を下す前に必ず「チャンス」を与えていた。前作の敵、限りない暴力を振るっていたテディにさえも反省のチャンスを与えていた訳だが、今作ではその要素が薄くなってしまったのがちょっと寂しい。人が本当に反省するかどうか正義と悪のリトマス試験紙的なシーンを今作でも期待していたのだが。友殺しだから反省のチャンスは与えないという理由は分かるが、それ以前のジャブ的な事件にはその要素を濃くしてほしかった。

最終決戦の舞台が町、ハリケーンの中心で住民が避難しているという点、一般市民に余計な気をまわさずドンパチやれるという制作側のナイスアイデアを感じた。が、マッコールが故郷?に戻ったのも唐突だし、それをデイヴ達が追うのもよく分からなかった。マイルズという人質をとったのであれば、デイヴ達は「待ち・脅し」の姿勢を貫けば良かったのではと思った。前作と違って敵はマッコールの元同僚という立場。悪環境の中で相手の故郷、いわば地理に詳しい場所に乗り込まんでも電話で脅しかければ良かったのではと思ってしまう。またデイヴサイドのイコライザー組が4~5?人いるにもかかわらずマッコールと戦闘力が総合的に見ても釣り合っていないように見えるのもちょっと気になる所。マッコールが受けたダメージは最後のデイヴのナイフ術くらいの印象。イコライザーが敵対するという盛り上がる展開の割には、一方的な奇襲、淡々としたホームアローンを見せられているようだった。マッコールという存在が正義を教え、弱者を救ってくれる。そこに弱さを見たくない気持ちは多少はあるものの、これだとCIA工作員時代のリーダー・マッコールのワンマンチームだったのかなとも思えてくる。

デイヴ達は工作員という職業はお払い箱にされれば殺し屋になるしかないとか話をしていた。序盤の夫妻殺しも「依頼元」からの指示と言っていたし、それに連鎖してスーザンを殺害するハメになってしまったそうだが、その「依頼元」は今作では倒さないのか?という疑問。前作で言うボス、プーシキン位置だと思うのだが、殺害実行犯であるデイヴ達に手を下して、さらにその先の巨悪について特定するのかと思ったがそこは全く触れられていなかったのもなんだか気になる。もしかして自分が作中で触れられていたのを見逃していたのだろうか?

なんだかんだ書いたが鑑賞後にガッカリという気持ちにはならない。前作の流れは継承しつつ、マッコールという男に焦点を当てた今回のストーリーは、人間関係が巻き起こす起伏に関しては重厚、骨太になった。一本の大筋を取り囲むサイドストーリー構成も各々が邪魔をすることはなく、ラストの壁に関しては爽快な気持ちにさせてくれる。個人的に大塚明夫のマッコール吹替はかなりハマっていたのでソフト版も楽しみの一つになりそう。
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