このレビューはネタバレを含みます
300分と超長尺だがその価値はある。
まずキャスティングが良い。誰にでも当てはまるキャラが揃っている。しかし登場人物は誰も死んだりしないし驚愕の展開もない。
————仲の良い30半ばの4人の女性が中心の本作はそれぞれに世帯を持ち家庭を持ち人生を謳歌しているように見える。
そしてとにかく会話のシーンが多い。長尺の理由は会話から織りなす心の移ろいを丹念に描きたかったからなのだろう。しかしその会話はどこか常に地雷を踏みそうであるし、事実それが発端で紛糾する事は一度や二度ではない。なんでも話せる気のおけない間柄に見える彼女たちは、案外小説家のこずえがドラマの終盤で語るように「大切な事を言わないから幸せに過ごせる」のかもしれない。
「幸福」や「生きがい」など個々人の人生を支える価値観はいかに脆いか。そして夫婦の関係も動揺に常に危ういモザイク状態で何かの拍子に瓦解してしまうことを暗示させてくれる。
私は「Drive my Car」を観て濱口竜介作品を追っているのだが、本作を観ると村上春樹原作の映画はいかにもハマりそうだなと納得した。