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ハッピーアワーのAZのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
3.8
5時間17分もある映画を観たことがない。なぜこんなにも長くなったのかは、観ればわかる。この世界に巻き込みたかったんだと思う。

この作品で素人の4人の女性たちはロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したという。ただ、観た感想としてはやはり長いと感じてしまった。けれど、長いと感じていいと思う。合間合間に演技ではない素の会話や表情を織り交ぜることで、台詞なのか本音なのかを曖昧にさせながら、この展開は大丈夫か?と鑑賞者を不安にさせつつ、その緊張をほぐすような展開や感動的なシーンの後、それを裏切るような退屈なシーン。

この映画にどう向き合えばいいのかわからなくなる。映画の登場人物達もそのような状態だ。この世界とどう向き合えばいいのかわからない。

全然気持ちのよくない映画という感想。気持ちよく生きてる人がいない。ただ一人、自分に素直に生きている純の姿はすごく素敵に見えた。

いくつかのシーンは胸を強く熱くするものがあり、例えばバスの中で出会った女性との会話は、なぜだかすごく良いと感じた。赤の他人である彼女に対して、純が今の自分の状況を打ち明けるシーンは、映画という小さな世界を拡張させる効果があったように思う。全く映画のストーリーとは関係のない、その女性の父親のよくわからない話が、だからこそ純のストーリーだけで進む事によって生まれるフィクション性を弱め、現実と非現実とを曖昧にさせる。

またその女性の表情や話し方が、その女性の性格を表してるであろうすごく自然な姿だったのが何より良かった。

どの意見もあってるし間違っている。世界はそんなに単純じゃない。この映画もそう。

この気持ちで高評価はどうしてもあげれない。泣いちゃったけれども。
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