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ハッピーアワーのtのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
4.8
2015/12/30@ イメージフォーラム

「他者と関わる」という、命がけの跳躍は実は意味をなさないのか、だとするとその行為は何なのか。しかし、結局人は他者に関わらざるを得ないし、どうしてそれを欲してしまうのか。
対話する、一方的に喋る、敢えて黙る、嘘をつく、腹の音を聴く、等のコミュニケーションの様態を目にして、そういった思考をめぐらせ続けた珠玉の317分。
恐らくこの映画を観てそれぞれ感じるところは全く違うだろう。自然体な、しかし明らかに演じられた印象的な台詞の応酬で、自分の心の深い部分を抉り出しにかかってくる。「恋人たち」にも同種の感動があったが、それより更に深いレベルで静かに。
ワークショップや朗読会の、現実と虚構が入り混じったような描かれ方は未知の体験。と思えば、語り口にはカサヴェテスを連想、ショットや口調に小津を感じたり(有馬温泉のシーンとか「お茶漬の味」を思い出した)。
この映画について他人と対話するまでのプロセスを終えてこそ、真に「『ハッピーアワー』を観た」と言えるような気がする。
一年の締めくくりにこういった大傑作を観れて幸せです。
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