JunIwaoka

ハッピーアワーのJunIwaokaのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
3.5
2016.1.1 @ シアター・イメージ・フォーラム

冒頭のタイトル表記するシーンを観て、あぁきっとこれは青春映画なんだろうと思った。まるで夏休み最後の1日を描く青春映画みたいに、戻ることのできない幸せを感じた時間に思いを寄せているように。
何気なく4人でいるときは日常を忘れさせてくれたけれど、年を重ねていくとともに、寄り添い背中をもたれ合わせていた重心はズレてくるもの。向き合うものがそれぞれ違うし、心の変化はあって然るもの。みんなが変わらずに側にいることを拠り所にしてしまうと、友達なら普通はこうするべきという強要を無自覚に感じてしまい、居心地は悪くなってしまう。彼女たちの共通の悩みである結婚生活においても、日常をやり過ごすことで平常心を保とうと思うと、どこかで息苦しさを感じていって、真綿で締めつけらるように心を殺してしまう。だから桜子さんの義理の母親が言っていたことが極論でも一番共感してしまう。いつまでも側にいる関係もあれば、離れてしまうこともあって、考えてもそこに答えなんてものはないから、どちらも上手くいかないのかもしれなければ進むべきかもしれないね。もしそれで離れてしまっても、もしまた会いたいと思うときがあれば、あのときのまま話を聞いてあげればいいんだよ。変わらない友情を知るときがあるはず。
まるで友人の愚痴を時間を忘れて聞いているみたいで、それを肯定も否定もせずにあの場でもがいていた彼女たちがいたことを讃えるようだった。友達の感想を聞きながらデプレシャン作品っぽいなと思っていたけど、ミア・ハンセン=ラブ的に過ぎ去る時間をただ捉える。300分強の時間の長さはまったく感じなかった訳ではないけれど、ワンカット毎に丁寧に撮られ、よく考えられて構成されていたから飽きることはなかった。ただ本当に残念だったのが、意図的にやっていることが後から分かったけれど、詩を読み上げているようなセリフの言い回しに違和感を感じ続けたこと。あと言葉では言い表せないという人との関係性や、心の動きを上手く表現していたのに、3部のあるシーンで分析的にみずから解説してしまったところで、ゲンナリして我に返ってしまった。

年末に駆け込んで観た邦画2作"恋人たち"と"きみはいい子"と描こうとする根本は変わらないし、今年邦画がほとんど心に響かなかった理由が分かった気がした。
家族や友情のような心の拠り所になるべき居場所という価値観が、社会の中で形骸化してしまったことはもう言わないでも分かってるよ。僕らより上の世代が無下にしてしまい日常に息苦しさを感じる中で、僕ら世代は(少なくとも僕の周りはね)意識的に大事にして構築しているように思う。だからこそ、この3本のエンドロールのその先を観たいし出来ればそこに希望があってもらいたいんだよね。
JunIwaoka

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