shunsuke

ハッピーアワーのshunsukeのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
4.5
秘密をある程度お互いに話さないことで何とか「穏和な」友人関係を保っている女性たちが、それぞれが抱える個人的な事情が逼迫するにつれ「話すこと」で精神的に開放される状況が進展していく中で、ついに押し込めていた思いの吐露を交差させるまでに至り、お互いの「関係」とそれぞれの「自我」の均衡を模索しそしてその失敗を繰り返していく。
そしてある者は突然立ち去り、ある者は「自我」のために「関係」を捨て、ある者は「自我」と「関係」の間で惑い続け、ある者はその両者が両立すると紛うことなく信じ続ける。

屋上での清々しさをも感じさせるラストカットを見ると、確かにこの映画の向かう先は楽観的な未来なのかも知れない。
それでも、自分にとって本当に大事なものを守るためのそれぞれの選択によってこの4人の女性の関係が映画を通じてずたずたになってしまったとしても、「絶対に守るべきライン」を守りきろうとした友人たちを「信じる」その気持ちだけで傷だらけの関係を縫い合わせようとする一人の女性の決然とした姿で締めくくったこの映像の力強さには、正直目を見張るものがあった。

「ハッピーアワー(幸福な時間)」は、自分の中に澱む思いのどろどろとした部分を吐き出し、他人との関係の中で霞む自我の中枢に触れ、それを引っ張り出して「ありのままの自分」へと回帰していくその過程を経て生まれる。その先の彼女たちの関係は、何を話しても受け入れ、受け入れられる、何の肩肘を張ることもない真の友情を孕んでいるとも言えるのかも知れない。そんな風に感じた。

4人の女性、そして登場人物たちが言葉をぶつけ合い「幸福な時間」を模索していく5時間20分。観客の中で自由に延長されていく「その後の時間」の中には、登場人物が失った分だけそれを埋めていくに足る何かが醸成されていくに違いない。
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