コービーブラック

ハッピーアワーのコービーブラックのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
5.0
港町・神戸を舞台に人生に向き合う37歳の女性4人の姿を描く。トンネルを抜けた先、霧がかった風景が象徴するのは、不透明な未来。親友や夫婦や親子だとしても、他者は「分からない」ことだらけ。それでも「分かりあいたい」と願う彼女たちの人生を追体験する幸福な5時間17分。
心象風景を描く映像表現が素晴らしい。「海」で自由な心のあり方、「階段」で心の浮き沈み、「窓」で本心の解放、「電車」で心のすれ違いを想起させる。そして、演技もいい。小津作品を思わせる抑揚のない台詞回しに自然な表情と視線によって、生々しい心情が伝わってくる。
不穏さと緊張感を作り出す演出で長尺を感じさせない。むしろ、ヒロインたちのキャラクターの心情を理解していったことで、もっと観ていたい、もっと分かりたいと思った。「諦めないことにした」と自由な海へと踏み出す純の言葉が残る。彼女たちと同い年で観れて幸せでした。