さむ

ハッピーアワーのさむのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
5.0
「叩けばいい音がするので、中身が空っぽなんだと思います。」
言葉を尽くして真実を語りたがる登場人物が多い中で、鵜飼の妹、そして、あかりの放つ短いセリフたちが心に沁みる。

言語表現の限界と肉体表現の限界。

朗読会の若い女流作家は、言語表現こそがこの世のすべてを表現し尽くし得る万能ツールであると信じているようだ。映画の中でかなり長い尺を占める退屈な若き女流作家の朗読は、言語表現の限界をシニカルに表現していたように思う。

言葉にすると嘘になる。本当の真実を言葉で語ることは不可能。
わかり合うことは奇跡。相手の立場になることは永遠に不可能。

乗り物に乗って移動するシーンが多いのは、人間の意志と運命を象徴しているのだろうか。

不惑を目前に迎えた男女の、「惑い」に対する足掻きの数々が散りばめられた5時間17分。
さむ

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