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ハッピーアワーのgogotakechangのレビュー・感想・評価

ハッピーアワー(2015年製作の映画)
4.7
相手にわかってもらいたいという思いが募り過ぎると、つい自分の身の丈に合ってない言葉を発してしまったりする。
後で振り返ってみると、とても仰々しく芝居がかっていて、まるでコントのワンシーンのようで、穴があったら入りたいような思いに駆られてしまうこともある。

このときの、多分に身勝手で独りよがりで自分に酔い痴れた振る舞いは、一体誰に向けて演じているのか?

おそらく、自分の中に自分で勝手に作り上げた"相手=他人"に対してであり、その時は確かに目の前にいたはずなのに、当然ながら熱が醒めると跡形もなく消えてしまっている。

この作品の中で発せられるセリフは、強い説得力と必然性とを兼ね揃え、絶妙のタイミングで発せられるにも関わらず、誰かの発した、やはり同じくらいの重さのセリフでいとも簡単に覆されてしまう。そして、返す刀で相手を切り裂いたつもりだったのが、実はいつの間にか自分の身をも切りつけてしまっている。相手の突き刺した刃を更に自分で力を込めて押し付け、傷を深くしてしまう。

この作品の登場人物の全てがそうである。

皆、自分のことがわからない。
一番知ってるはずなのに、一番知らない。

見知らぬ誰かが、他の誰かのために創った理想像に、自分の心を乱暴に詰め込んで「自分、也」と、勝手に収まっているだけである。

それは、"自分"ではない。
それを"身の丈"としてしまえば、当然、全ての言葉や行動は後から"恥ずかしい"ものとなってしまう。

でも、その理想像に収まりきれずはみ出した心にこそ、本当の自分がいる。

それは他人にしか見えない。

ただ、その他人も自分が見えていない。

自分は、現実の他人によって作り、作られている。
だから友人は大切なのだ。

果てしない衝撃を受けたはずなのに、言葉にすると、こんなありきたりな結論に落ち着いてしまった。
いやもっとスゴイのよ、この作品は!
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