うめまつ

うちにどうして来たののうめまつのレビュー・感想・評価

うちにどうして来たの(2009年製作の映画)
4.0
登場人物①監禁される方
妻とお腹の子を目の前で殺されたショックから精神のバランスを崩し仕事も失い、自殺願望末期で引き篭もりの30代男性(顔:パクヒスン)

登場人物②監禁する方
初恋の君(①ではない)が忘れられず、行き過ぎたストーカー行為により刑務所に2回送られた、路上生活者の20代女性(可愛くてぶっ飛んでで鬼強い)

この何の接点もない二人の強制共同生活というか、明るい監禁生活の約一ヶ月間をコメディタッチで描いているんだけど、起こっている事象(住居不法占拠及び拘束監禁)は限りなくサスペンスなのに、どちらも色んな意味で平常心を失っているので会話も行動も全然想定範囲内に収まらなくて面白い。そしてとにかくパクヒスンの顔芸及び身体芸(それは普通の芸)が素晴らしい。序盤の正気を失った虚な目も魂が抜けた佇まいも真に迫っているし、監禁されてる最中は海老反りになって縛られたり、トイレに行かせてもらえなくて身悶えたり、飲ませてもらってた水を頭からかけられてびしょびしょになったり、絨毯の下に潜り込んで寝たりして、可哀想レベルが上がるほど可愛いくて困る。涙を溜めてふるふるしてる瞳も、諦念と生存本能の間で揺れ動く表情も、その顔にかかる無造作ヘアーも大変好みで変な扉が開きそうだった。極め付けにはお風呂で髪を洗ってくれるサービスっぷりで、やたら楽しんでしまったので別料金を払いたくなった。

世界の《普通》から弾き出された者同士が、最悪の出会い方をしつつもヘンテコな友情のような親愛を築いていくという、構造としてはよくある話なんだけど、シナリオの特異性と、キャラクターの振り切り方と、軽妙な質感の組み合わせが新鮮で、物語が何処に向かうのかが全然わからなくてそのドライブ感を楽しんだ。終盤はしっかりしんみりもさせてくれるので、この2人の異常な生活から離れがたいような、そうでもないような不思議な愛おしさが残った。

オペラグラスと日記/ミザリーと愛と哀しみの果て/肉まん5個と1個/ビニールハウスクリスマス/監視カメラとレンタルビデオ
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