幌舞さば緒

ちはやふる 下の句の幌舞さば緒のネタバレレビュー・内容・結末

ちはやふる 下の句(2016年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

下の句は各々が〝かるた〟への向き合い方、続ける理由を紐解いていく物語。上の句に続き、いい場面がたくさんあるのだけれど自分は原作、実写問わず若宮詩暢推しであり、千早と詩暢の漫画で描かれるまでの結末を知っているので、畳上での初対面、ダディベアのタオルの持ち主が千早と理解した時のクイーンの表情を見るだけで身震い…。そして、千早に〝しのぶれど〟を取られてから、千早の情熱に感化されて表情が豊かになっていくクイーンの姿を見るだけで涙。千早の情熱は周りにいる仲間たちだけでなく、孤独と孤高を体現する若宮詩暢にまで引火し始める。須藤vs太一の結果が分かる畳上でのシーンは、千早と詩暢の物語をより一層良く見せるために編集時にカットしたのだろうか。試合後、ソファーで千早を励ますシーンの撮影時の脚本に「須藤さん強かったなあ」的な台詞があればよかったんだろうけど、撮り終えてから編集時に当初の予定を変更したのだろうか。いずれにせよ、千早と詩暢のバイブス優先の編集に振り切ってくれたからこその感動だったと思う。


台詞メモ

「聞こえる。太一の息、荒い。でも気持ちは負けてない。新は落ち着いてる。鼻が少し詰まってる。私は…ひとりじゃない。ひとりじゃないんだ!」

「とにかく今は全国大会だ。俺たちは強くなってアイツを待とう」

「だってかるたで日本一になれば、それは世界で一番ってことやろ?」「なれるよ世界一に。綿谷くんならきっと」「ほんなら、綾瀬さんはクイーンやの」

「アイツもようやくかるたが好きになってきたか」「太一は元からかるた好きでしょ」「そうかな?俺にはそうは見えないけど」「好きじゃないならなんでやってんの?」「それは、かるたが好きというよりは…」

「あ、分かった。肉まんくんがずっと準優勝できてたのは、綿谷さんがクイーンを倒してたからなんだね」「机くんのそういう鋭いとこ、好き」「私、クイーンに勝ちたい」「出たー綾瀬の強欲」

「試合の流れが悪い時ってどうしてる?そういうのない?狙ってる札が全然読まれなくてペース掴めないまま気がついたら負けてるみたいなこと。そういう時どうする?いや、どうしてた?…ないか。新には」「イメージや。立ち上がって思い出すんや。かるたが一番楽しかった時のことを」

「左利きに向けて調整なんかしたら絶対にかるたに隙ができる。全国レベルの選手がそれを見逃してくれると思うか?半端な気持ちじゃ勝てねえんだよ」「それも原田先生に言われた」「お前の考えてることはだいたい想像がつくよ。でも、クイーンに勝ったからって新が戻ってくるわけじゃないからな」「分かってる」「分かってない!お前は今やるべきことから目を背けてるだけだ」「みんなには迷惑かけない!練習も今まで通りやるって約束するから」「お前の不器用さは俺が一番分かってる」「お願い太一」「千早、お前は何のためにかるた部創ったんだ?何のためにかるたやってんだ!新のためか?」「分かんない…分かんないよ。でも、このまま何もしなかったら私が私じゃなくなっちゃう。太一と新と離れ離れになってから私、ずっとずっと寂しかった。だからまた太一に会えた時は本当に嬉しかったんだよ。何があってもひとりになっちゃらダメなんだよ!新がいれば、仲間がいれば、私はクイーンにだって負けないよって…私が新に伝えなきゃ」「団体戦が優先だ。みんなが許しても部長の俺が許さない」

「はぁあ!?これは、原宿限定おめかしダディタオル!…なんで?なんでアンタがこれを?アンタ、いつからこんなええ趣味しとったん?」「いや、これは人の忘れ物や」「…忘れ物?そりゃそうやろ。その顔でダディベア好きやったらドン引くわ」

「〝ひとはいさ〟や」「心も知らずふるさとは花ぞ昔の香においける」「気持ちがどんなに移り変わっても故郷の花はいつでも自分を待っていてくれるっていう歌や。じいちゃんには困った時にいつでも帰れる心の故郷があるんや。新、かるたに行き詰まった時はイメージや。かるたが一番楽しかったのはいつやった?」

「かるたを好きやのうなったんやったら、もうやらんほうがええ。かるたが気の毒やわ。アンタも独りでかるた強なったんかと思ってたけど所詮、おじいさんのためにやってきたにすぎひんねんなあ」「ほんなら、詩暢ちゃんは何のためにかるたを取るんや?」「そんなもん、自分のために決まってるやん」「詩暢ちゃんの強さはそうゆうとこなんやな。なんもぶれんくて、真っ直ぐで。知り合いを思い出すわ」「知らんわ。そんな知り合い…けど、このタオルは激レアアイテムや。ちゃんと返してあげ」

「あいつ周りが見えてないんだ。なんでも一人で背負い込むから。そんな奴と同じ畳の上にはいられない。…なに?」

「一度走り出したら周りが見えなくなっちゃうところ昔のまんまだな。君と眼鏡くんがいなくなってから千早ちゃんは、かるた友達見つけられなくてずっと苦しんでた。ひとりでかるたに向かう寂しさ知ってるから同じ思いを眼鏡くんにさせたくないと思ってるんじゃないかな。すまない、まつげ君。あの頃の千早ちゃんを思うと、私には彼女を止められなかった」

「眼鏡くんも、千早ちゃんも考え始めてるんだ。なんでかるたやるのか」

「そうじゃなくてさ、なんで黙っていくんだってこと。真島っていっつもさ、自分がなんとかしなきゃって思ってるだろ」「それはそうだろ部長なんだから」「それだよそれ。福井で何があったか知らねーけどさ、クイーンに勝つとか、A級になるとか、お前らだけでかるたやってるみてーじゃん。俺らもいるんだよ」「部長までひとりになるつもりですか?」「僕たちにも何かできることないの?」「そうだよ…勝手にひとりになるなよ」「もっと私たちを頼ってください」「…そうだよなあ。バカだな俺」「バカは綾瀬ひとりでもうお腹いっぱいなんだよ」

「お前やる気あんの?クイーンとか言ってる場合か?…あそうか、北央はこの程度の奴らに負けたって俺たちに恥かかせたいんだろ」

「俺たちが強い北央でいられるのは、先輩たちが積み上げてきたもんがきっちり現役に受け継がれてるからだ。自分だけでかるたしてるとか勘違いすんのはお前の自由だ。でもお前は、これからもずっと瑞沢かるた部だろ。東京の代表が果たすべき責任はお前らだけのもんじゃないってこと忘れんな」

「千早、おれ勝ったよ。3人でチーム組んだ時のことが頭に浮かんできた。新に教えてもらった流れが悪い時のコツだよ。優勝した。俺、A級になったよ」

「確かにどちらも勢いの強さを表した言葉ですが、その性質は全く違うんです。〝あらぶる〟は乱暴で不安定な力であるのに対して、〝ちはやぶる〟はその勢いがただ一点に集中した状態なんです。軸を中心にどの方向にもぶれることなく、まるで止まっているかのように…」

「お前動いたり喋ったりしてねーと無駄に可愛く見えんだから。男子たちに変な期待させんなよ。後で裏切られる身にもなってみろ。可哀想だろ」

「私はねえカナちゃん、個人戦こそ本当の団体戦だと思うんだよ」

「綿谷新はおらへんのか…あのニコニコ眼鏡」

「机くんがね、かるたが最高に楽しいって言ってくれたんだ。新に教えてもらったかるたがどんどん広がっていくよ」

「肉まんくん覚えてる?最近言われたんだ。お前の得意札がいつの間にか俺たちの得意札にもなってるって」

「凄いなあ西田。詩暢ちゃん相手に気後れしてへん」「負けると分かってても力の限り粘ってクイーンを削ろうとしてるんだよ。次にクイーンと戦うかもしれない仲間のために」

「一足先にミンチにされた」

「あの人らは、かるたやのーてみんなで何かしたいだけなんやろ。団体戦はかるたが好きやない人がやることや」「ほうか?チームでやるのも案外悪ないかもしれんよ」「ほんならウチがはっきりさせたるわ。どっちのかるたが純粋か。かるたにひとりで向き合っとるもんか、仲良うみんなでやっとるもんか」「戻るんか?」「団体戦なんてお遊びやったって全員に言わせたるわ」

「机くん、肉まんくん、見えますか?」「綾瀬がドタバタしてない」「ああ、やっと意味が分かったよ」「はい、あれが〝ちはやぶる〟ですよ」

「個人戦なのに、離れてるのに、みんなの気持ちが繋がってる」「試合の前からずっとお互いに励まし合ってきたんだ。だったらそれはもう団体戦だろ?千早ちゃんも、まつ毛くんも、ずっと君をチームだと思ってるよ。君が何処にいても、かるたをしてなくても」「先生、千早は楽しそうですね。なんであんな楽しそうなんやろ。千早がやってるからそう思うんかな。俺たちとやってたから千早もそう思ったんかな」「綿谷先生が君にとって大きな存在だったことは分かる。でも、君がかるたをやる理由は一つじゃなくてもいいだろ?」

「もっと…もっと!繋がれ、繋がれ!糸のように!新と、太一と、みんなと!繋がれ!上手く言えないけど、私にとってのかるたって…そういうこと!?」

「あの!…楽しかったね。また、かるたしようね」「…いつ、いつや?」「クイーン戦で」

「どうや、詩暢ちゃん。どっちのかるたが純粋か俺にはよう分からんけど、俺らの好きなかるたの世界を豊かにしてるのは、チームを持ってる人たちの方やと思わんか?」「お説教やったら、あの子がウチに勝ってから聞いたるわ。あの子に伝えてや。はよ上がって来いって」
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