通りすがりのアランスミシー

家族の風景の通りすがりのアランスミシーのレビュー・感想・評価

家族の風景(2013年製作の映画)
1.3
売れっ子俳優の池松壮亮が監督との学生繋がりで出演していた
というのが唯一の売りだったインディーズ映画。

私のようなインディーズ映画を山ほど観てきた人間にとって誰が出演しているかは作品を観る上で最もどうでもいい要素なのだが、
少なくとも私は本作の池松氏を観て彼のことが嫌いになった。

よく「リアルな芝居」「ナチュラルな芝居」というが本作での池松氏の芝居は
「ナチュラルな芝居をしようとしている芝居」(というのは某有名監督の談)

「自分だけはプロの俳優だから〜」云々という発言からもわかる通り周りの共演者を見下している感が
画面から滲み出てしまっている。
正直言って彼が共演の無名俳優二人と比べて特に優れていると思えない。
画面から滲み出る肥大化した彼の自意識が鑑賞時のストレスを増幅させている。

作品としては若者が背伸びして純文学小説をやりましたという感じで、未熟さとチグハグさが出てしまっている。

本作は「母親が怪我をした」というささやかな事件が起きるが限りなくフィクションラインの低い日常的な内容に収まっている。
スケール感にそぐわないレベルで必要以上に会話も演技もシリアスだ。
大体において、日常において人はあんなに高頻度で深刻な顔をしたりしない。
ユーモアが全くない。「上手くつくろう」とし過ぎて力こぶが入りすぎている。
そのせいでリアリズムを目指しているはずなのにどことなく嘘くさい。

また、本作に限らない事だが、インディーズ映画は「人人人」と画面が人だらけになりがちなのだが
この「家族の風景」は「物にカットアウェイして逃げる」や「顔以外の人間のパーツを映す」という工夫すらなく、しかも1カットが異常に長い。
1カット長回しの会話ショットは役者に演出を投げっぱなしにしてしまうので良く段取りした上でないと危険だがこれだと……。
時間経過する場面でそれを感じさせるようなカットも無く全体的に不細工な印象が残った。