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家族の風景のchamのレビュー・感想・評価

家族の風景(2013年製作の映画)
4.3
何年か前に下北沢トリウッドで上映されているのを観て素晴らしかった佐近圭太郎監督の日芸卒業制作の作品が、あしたのSHOWというサイトで配信されていたので何年かぶりに観ました。

「家族の風景」というタイトルの通り、父と母、離れて暮らす社会人の息子の家族のとある日常を描いていて、親子間、夫婦間の些細なやりとり、一方通行でかみ合わないけど、見えないところでバランスを保ち想いあっている家族の姿が映し出されていました。
この映画を初めて観たときは私もまだ父親が元気で働いていて、家族バラバラだけど平和に過ごしていたのですが、この数年の間にその父も病気で亡くなり、この映画のようにどこか気が利かず頼りないところもある父だったけど、母や私にとっては心の支えでもあったんだなぁと今となっては実感する日々なので、久々にこの映画を見て、家族の他愛もない喧嘩や失敗など何気ない日常が宝物のように輝いて見えました。

この配信映像の中には監督のインタビューもあって、卒業制作がなかなか決まらず困っていた監督が自分の半径1メートル以内の家族の話を作ろうということになり、その段階ですでに演技コースの同級生はみんな他の監督の卒業制作の出演が決まってしまっていて、たまたま同じ監督コースの同級生にいた俳優の池松壮亮さんに出演をお願いしたら快諾してもらえて作ることができた作品だったなど、今となっては貴重な学生時代の制作秘話なども聞けました。

学生映画だけど、この映画を作った学生さんたちのシンプルな映画制作への思いが詰まっていて、どんな家族映画よりも純粋な気持ちで見れる作品だし、映画って素敵な作品ほど時間がたってどんどん特別な存在になっていくんだなぁと、今回改めて観て実感しました。
当時からもうすでにプロの役者だった池松壮亮さんも、役者というより、他の学生さんたちと同じように純粋に映画に取り組んでいる姿が映し出されていてすごくよかったし、こういう経験が今の彼の映画人としての映画への真っ直ぐな向き合い方にも反映されているんだろうなと思いました。
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