アリ

しあわせへのまわり道のアリのレビュー・感想・評価

しあわせへのまわり道(2014年製作の映画)
3.7
同じNYに住んでいても全く異なる二人の転機が、ごくささやかに交錯するお話。
車の運転が自由を手に入れることというのは、私自身が運転出来ないので逆によくわかります。
「私には無理!」と思ってしまう気持ちも、とってもわかる。

転機というのは肩肘張って胸張って挑むものばかりでなく、必要に迫られ、後に引けなくなり、ビクビクしたり、途方にくれながらやるしかないものだったりもするんですよね。
大人になるほど、変化や新しい挑戦の前で、何でもないって顔しつつ実はビビっちゃってる気もします。

そんなとき、まずシートベルト、と心の奥で気持ちをリセットさせてくれる声があったら。
知らない街でどうしたらいいかわからないとき、話しかけてくれるひとがいたら。
身近なひとには出来ない相談があるとき、ちょっと知り合い程度の誰かがきいてくれたなら。

いくつになっても本当は不安で頼りない大人同士がすれ違うとき、そんな風に少しだけ支えあえるなら、本当はそれが一番世界を自由にするんじゃないかと思いました。
エンドクレジットが流れるのをぼんやり眺めていたら、本編の間は全然誘われなかったはずの涙が出てきてしまった。そんな映画。

NYのシク教徒コミュニティをちらっとだけど覗けるのも楽しかったです。
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