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Pull My Daisy(原題)のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

Pull My Daisy(原題)(1959年製作の映画)
3.5
【映画はビートを刻む】
ジャック・ケルアックの「オン・ザ・ロード」を読んでいると、ハリウッドに映画の脚本を売り込みに行ったり『マルタの鷹』や『サリヴァンの旅』への言及がされており、ひょっとして映画に関わっていたことがあるのではと思って調べてみた。1959年に写真家のロバート・フランクがアルフレッド・レスリーと撮った短編映画『Pull My Daisy』の脚本を手掛けていた。ロバート・フランクといえば、写真集「アメリカ人」を出版する際に、ジャック・ケルアックに序文を依頼したことで知られている。この翌年に本作が制作された。主演はアレン・ギンズバーグ。ナレーションはジャック・ケルアックが担当した。つまり、ビート・ジェネレーション作家による映画となっているのだ。実際に観てみると、芸術家の才能がぶつかり合う作品であった。

ロバート・フランクの複雑な空間を作り上げようとする気概に満ちた作品だ。部屋を廊下、壁、寝室の3つのレイヤーに分割した画を捉える。廊下の画には冷蔵庫が邪魔をしており、その奥で女性の人だろうかカーテンを開けている。廊下のレイヤーをまた2分するのだ。これは写真的静の中で画を生み出す演出だが、彼は積極的にカメラを回転させて立体的な画を生み出そうとする。写真家が映画を撮ると、静止した画の中に決定的瞬間を捉えようとしがちだが、彼の場合カメラが動き、その中で決定的瞬間を捉えようと試みる。それは『キャンディ・マウンテン』へと引き継がれている。

内容は、ジャック・ケルアックのリズミカルな文章披露となっており、「鏡の国のアリス」の一節を引用したり、突然ゴキブリでビートを刻み始めたりする。その中でアレン・ギンズバーグが自堕落な暴れ方をする。双方の才能がぶつかり合い、映画を盛り上げていく。ある意味、ヤサイニンニクマシマシ。芸術家のセンスをひたすら盛り込んでいくタイプの作品であった。まさしく、ジャズのセッションがこの映画に存在するのである。
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