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疑惑のチャンピオンのEchoesのレビュー・感想・評価

疑惑のチャンピオン(2015年製作の映画)
4.0
ランス・アームストロングという何とも評価しがたい人物について、悲運のヒーローとしてでもドーピングまみれの卑怯者としてでもなく、思いの外ニュートラルな視点から描いたドキュメンタリーであり、彼がいかなる人物なのかを理解する取っ掛かりになった。
本人の強靭なエゴだけではなく、マスコミやUCI、自転車業界の色々な人の思惑が相まって虚像のヒーローを作り出してしまったのであろう。
アームストロングと競い合った相手たちもドーピングをしていたとの描写が劇中にも多少はあったが、そうした中で他に勝つ手段があったのかどうか、一体彼はどうすべきだったのかと考えると何とも答えに詰まる。
チームメイトのフロイドがドーピングについて追及されてタジタジして目が泳ぐのに対して、アームストロングは全く動じずにドーピングをしていないと言い切ったことの対比は、彼が常人離れした太々しさを持った人物なのだということが分かりやすく面白かった。
アームストロングがいかなるメンタリティで末期癌に犯されようが常に勝つことや相手を打ち負かすことに徹底的に拘り続けたかとか、ツールで7連覇して自分の力を全て証明してもなぜ現役に復帰したかは、全くこの映画から見えて来ず自分にはわかりようがなかったが、彼の不屈の闘志や精神力には常人の理解を超えたものがあるのだとは思う。
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