KOUSAKA

光のノスタルジアのKOUSAKAのレビュー・感想・評価

光のノスタルジア(2010年製作の映画)
3.8
チリ弾圧の歴史を描く3部作『夢のアンデス』『真珠のボタン』に続いて、最後に見たのがこの『光のノスタルジア』です。

見る順番がたまたまリリース順とは逆になりましたが、こうして旧作を見ると、最新作『夢のアンデス』は、パトリシオ・グスマン監督にとってより身近な「ホーム感」あふれる作品だったんだな~ということが分かります。最後はまさに「生家」に立ち返っていきますしね。

この『光のノスタルジア』は、宇宙の視点からチリ弾圧の歴史を解き明かしていくという野心作で、まず地球に届く星の光は「過去」のものであり、光を通じて私たちが見ている世の中のモノは全て「過去」であるという話から、天文学者は「過去」を探求し解き明かす仕事であるという話につながっていきます🤔

チリのアタカマ砂漠は世界で最も乾燥した場所で、湿気を嫌う天文観測に適していることから、たくさんの天文台と巨大望遠鏡が設置されているんですが、そんな長い長い「過去」を解き明かす天文観測を行っている全く同じ場所で、チリという国は、軍政独裁時代に虐殺した多くの国民の遺体を砂の下に埋めて、都合の悪い「つい最近の過去」を隠し通そうとしているという醜悪さに鋭く言及していきます。

そして後半、虐殺被害者の遺族たちが、愛する家族の遺体・遺骨を探すために(あまりに広い)アタカマ砂漠を当てもなく長年探し続ける姿を映し出します。

遺族たちのあまりに悲痛な姿には、ある種の絶望感とともに胸を抉られるような気持ちになりましたが、終盤に登場する天文学者との交流シーンで見られた一時の笑顔によって、決してあきらめることなく強い希望を持たねばと思い直しました。過去を解き明かす「同志」はここにいる‼️💪

物語の切り口があまりに秀逸な、ドキュメンタリー映画の傑作だと思います。
KOUSAKA

KOUSAKA