出だしがコメディとは思えないくらい殺伐としているし、その後の展開も主人公のキートンをめぐっての憎悪とその実行というシリアスな内容なのだけれども飄々としたキートンが出てくるだけでその空気をぶち壊しコメディ時空に変換させていくのが妙に痛快だったりする。
話の内容は後年のものと比べてストーリー重視で笑いの爆発力が少なめだが、それでも体を張りすぎて本当に人が死んでいないのかと不安になるギャグの数々は笑えると同時に凄まじいの一言でこうした命を懸けたギャグをやってきたからこそキートンの笑いは古びないのかと思ったりもする。少なくとも滝で落ちるヒロインを縄にぶら下がっているキートンが救うシーンなんてアニメや漫画では見かけても、実写でやっているのは初めて見たかも(いくら準備をしても役者が死んだり怪我したりするリスクが高いのでやらないのが普通なんだけど)。
初期の鉄道の構造を生かしたレアなギャグが楽しいと同時に歴史的に興味深かった、あと初期型の自転車(ペダルがなくて足でタイヤの速度を調整する)も見所。
『ロリ・マドンナ戦争』みたいな両家の死闘みたいな展開になりそうなところをキートンが上手くハッピーエンドへ持ち込んでいくラストは天晴れという気分になる。