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ミッドナイト・スペシャルのranoooのネタバレレビュー・内容・結末

ミッドナイト・スペシャル(2016年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ニュース番組の音声が徐々に聞こえてくる。誘拐事件の報道。
男2人とゴーグルをつけた少年は深夜、モーテルを飛び出し車に乗って走り出す。警察無線を傍受している。暗視ゴーグルを装着し、車のヘッドライトを消す。真っ暗な画面、エンジンを唸らせて車が走るーそして、「MIDNIGHT SPECIAL」の白い文字が画面いっぱいに映し出される。
このオープニングでまずがっつり心を掴まれた。

特殊能力を持った少年を、決まった日に決まった場所へ連れて行かなければならないー。『未知との遭遇』などの往年のSF映画を連想せずにいられない。
『テイク・シェルター』もそうだったが、ジェフ・ニコルズ監督はジャンル映画のような設定のなかで、「家族」の物語を繊細に描くのが上手い。ゆえに話運びのテンポが遅いと感じられてしまうかもしれないが、人物の描き分けと掘り下げ方が本当に上品で丁寧なのだ。

今作は少年は何らかの超能力を持っている、ということがはっきりと明示される。ラスト、現実の世界に繰り広げられる光景ーメインの登場人物たちだけでなく、大勢の第三者までその光景を目にするーは、しつこいくらい映し出されて、ジェフ・ニコルズ監督のこれでもか!という気概をどうしても感じてしまう。『テイク・シェルター』のラストは現実なんだよ!とでも言っているような。

またもマイケル・シャノンが主人公を演じ、ジェフ・ニコルズ監督との相性は本当に良いようです(この辺りは特典映像でちらっと語られていました)。また、ジョエル・エドガートンもさすがの存在感、演技力でしたが、今回新たな顔ぶれではアダム・ドライバーがやっぱりすごく良かった。政府側の立場でありながら、個人的信条も持ち合わせている、柔軟なキャラクターを見事に演じきっていたと思う。

今作で、シリアスなドラマを紡ぎあげ、映画ならではのカタルシスをもたらす、ジェフ・ニコルズは本当に素晴らしい映画監督だと確信した。劇場公開中の『ラビング』ももちろん観に行くが、また突拍子もないジャンル映画的設定の作品を作って欲しいなと思います。そして願わくばやっぱり映画館で観たい。
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