月うさぎ

殿、利息でござる!の月うさぎのレビュー・感想・評価

殿、利息でござる!(2016年製作の映画)
4.0
誰もがみんな間違いますよね。阿部サダヲ主演の時代劇コメディーだと。
この宣伝の仕方!ポスターもタイトルもキャッチコピーも!
コメディーはコメディーですがお笑いではない。
なんてきれいな映画なんだ〜〜〜
映像美とかじゃあありませんよ。
心がきれい過ぎて落ち着かない、ああ、私は汚れた現代に生きる都会人…。な、気分。
あり得ないなんて言えないのは、この話が実話をベースにしているからです。穀田屋十三郎は実在し、子孫の方は今もその店を守り継いでいるというではありませんか!

お上の押し付ける苦役負担が重く、潰れそうな宿場町。町を守る為に驚くべき手段に訴える決心をした十三郎。
先立つ物は「銭」!!

自己の利益も名声もあらゆる見返りのない投資だ。
「殿様に銭を貸し、利息を戴く」

これねー、実際アイディアだけで可能になる類の話じゃないですよ。
町民が、いかにお上に話を持って行くか、それには多くの関門があり、多くの人を協力者として巻き込まなければ実現不可能です。

これが史実であることを考えましょう。
この町民らの行為に心を動かし働いた人がお上の側にも必ずいた訳です。

綺麗事言ってんじゃねーよと白ける前に、どうせ自分だけで頑張ったってと匙を投げ出す前に「ほんの少しでも汚れた水を綺麗にしよう」という試みを尊いと思おうよということなんじゃないでしょうか?
確かに美し過ぎかも知れませんが、犠牲的精神を高揚させる映画(宇宙戦艦ヤマトのような)とは本質が違います。

ストーリーはサプライズにつぐサプライズで飽きさせないです。
役者さんの演技が絶妙なため、意表をつかれるんですね。阿部サダヲの思いの一途さ、瑛太の親しみを感じる優しさ、妻夫木聡の静かな上品さ、松田龍平の何を考えているのか全く読めない怖さ、西村雅彦のクセものっぽい俗人さ、竹内結子の女将のきっぷの良さ、これらのキャストの豪華さが、キチンとはまっている気持ち良さ。

阿部サダヲが主役という感じがしませんでした。主要メンバーだれもが主人公に感じられます。脚本の段階でキチンと作っているのでしようね。ツギハギ感を全く感じませんでした。

そして最後にもサプライズが!!
演技経験ゼロのあの人が登場!!

殿!が実にお似合いでした。
立ち振る舞いが綺麗。と、俳優さんからため息が漏れ、妻夫木君は記念撮影してもらってニコニコしていましたね。(メイキング動画で)

エンディングテーマ: 「上を向いて歩こう」
唄 忌野清志郎 でした。
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