tntn

ヴィジットのtntnのレビュー・感想・評価

ヴィジット(2015年製作の映画)
5.0
再鑑賞。複雑怪奇な物語論を、あくまでどんでん返し満載のホラーと、絶妙なギャグセンスで撮れてしまうシャマランはやはり最高。
トラウマや恐怖や傷を負ったら、まず物語を信じろ!そして物語を作れ!
特に映画とヒップホップは効くぞ!と言わんばかりだ。
ジュブナイルホラーとしての完成度は言わずもがなだけれど、改めて見返すと物語について本当に一貫した作家なのだとわかる。
さらに今回の場合、POV手法を導入することで、「カメラによる」物語というテーマに。
そこにあるものを完璧に記録するという暴力性と、しかしその視点に限定性があるというカメラの性質。
必ず語る人がいることと、語られる内容も語る人に依存するという物語の性質。
この二つが、見よう見まねで突き進む自主映画の制作、トラウマや葛藤の克服、前提が転覆されるツイストを含んだホラー、全ては編集されたものであるという本編自体の形式、と言った諸要素と完璧に合致している。
クライマックスからエンディングに至るまでの展開が泣き笑いが詰まって素晴らしいのは言わずもがなとして、重要なのはその直前のベッカと「祖母」の対話。結末を知ってからみるとより味わいが増すのは、「物語」を通して一瞬だけ交わってしまった他者同士の対話を描いているから。
勿論ラストで、監督と演者との信頼関係が生まれることで、母親の語りが丁寧に収められる。
電車の車掌や保健所の人などが、モブが皆「役者を昔やってて」と呟き、カメラに撮られていることを自覚して劇台詞を喋り出すのも示唆的。つまり物語に奉仕してるキャラクター。もう一人家を訪ねてきたカウンセラーの人は、特にそうしたことはしないんだけど、では彼女の末路は。この辺りは、物語論者シャマランの厳しすぎる点な気もする。
tntn

tntn