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愛するがゆえにのBaadのレビュー・感想・評価

愛するがゆえに(2013年製作の映画)
4.8
いや、ここまで忠実だとは思いませんでした、というレベルの忠実なリメイクでした。1954年のジョージ・キューカー版のスタア誕生の実直なリメイクです。主人公のダメ男っぷりもそのままで・・・違うのは二人の年齢差と階級差、新進スターになる女性の性格の良さと迷いのなさぐらいかなあ。

シュラッダー、ジュディー・ガーランドより演技力あるし、美人だし、母性的だし、芯が強そうだし・・・どちらかというとご本家のジャネット・ゲイナータイプですが、それでも恩人に引きずられる危うさがハリウッド映画にはない味付けです。

プロデューサーのマヘーシュ・バット(アーリア・バットの父)はこういうハリウッド映画とか西洋文学を下敷きにした低予算映画の佳作を作るのが本当に上手いんですが、これはその中でも出色でしょう。

タイトルを頂いちゃった元祖Aashiquiも見ましたが、あちらは90年代の怒れる若者達。おまけにちょっとイカれてもいましたが・・・急激な経済発展を背景に抑圧的な保護者の元から家出して同棲、別れて再会と勢いがあります。前作のラストシーンを二人が結ばれると物語半ばの折り返し点で使っているのですが、これは蛇足だったような気が・・・マイナス10点はそこです。

抱えているものが”2”の二人の方が重すぎるので、アクセントになってないんですよね。
たった20年で若者をめぐる状況がものすご~く成熟していることがわかるんですが、今の経済状況、インドの若者もしんどそうですね。

シュラッダーのさらなる成長はIFFJで公開される同じ監督の『野獣一匹』で見られますので乞うご期待。そっちの方がのびのびしてて可愛いし。ダブルダメ男だし。(一人は更生の見込みあり)難を言えば共演のシドくんがかすかに棒ですが、それは悪役リテーシュの名演技でカバーされてます。

最後にしみじみいいなと思ったのが、インド映画の分業システム。ハリウッド版の『スタア誕生』の唯一の難点がミュージカル女優としてのジュディー・ガーランドの演技の臭みで、ミュージカルシーンが邪魔でしょうがなかったんですが、アフレコで別の上手い歌手の歌をつけるということで二人の若手スターの演技に集中できて、なおかつ歌も楽しめて、本当にフレッシュな二人のスター誕生を満喫できる映画でした。

アル中のスター歌手役のアディティア・ロイ・カプールもかなりレベルの高い美男で表情も良くって、時々ハッとさせられました。正統派の美男子ってボリウッドでは少なくないんですが、主演の物は映画祭公開止まり。
子供映画の『クリッシュ』の限定公開ぐらいしかないので、そういう意味でも貴重です。

これは絶対DVD出してください。
歌詞が大事なので、英語字幕では辛すぎます。

(『スタア誕生』の忠実なリメイク、インド版 2015/10/9記)
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