あしからず

私、君、彼、彼女のあしからずのレビュー・感想・評価

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)
4.3
他者からラベリングされないパーソナルな空間で、純粋な私という一個体の存在、一人の生き物としての私が、床や壁に溶け出し、物質との境目を忘れた原子のように部屋と一体化する。家具を運び出しマットレスの位置を変え裸になり砂糖をスプーンで直喰いして手紙を書く私。そこから服という分かりやすく自己を表明する布を着て一歩部屋の外に出れば、女という彼の性欲の対象になり、微かに笑んで手を動かすだけの存在に変わる。そして今度は過去を共に蓄積した彼女によって元恋人(たぶん)という存在となり、性欲をぶつける側となる。獣のようなセックスはまるでコンテンポラリーダンスで、肌の擦れる音がしばらく耳に残っていた。
他者によって成立する自己と個の世界に存在する自己の不均衡が刺さる。初めの部屋でプリミティブに過ごすアケルマンはめちゃくちゃ既視感があった(あんな風に砂糖を貪ったことはないけど)
あしからず

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