Ricola

私、君、彼、彼女のRicolaのレビュー・感想・評価

私、君、彼、彼女(1974年製作の映画)
3.6
気だるさを常に漂わせている女。
ただ時間を潰すように生きているようだ。
世界も人生もどうでもいいと言うように、ひたすら時間が過ぎていくのを待つように生きている。


部屋から何もかもなくしてしまう。
家具も邪魔というかしっくりこず、マットレスだけを残しその上でほぼ一日を過ごす。身に着けている服さえも鬱陶しくなり、その服を脱いでそれを体にかける。
袋に入った砂糖を口に入れていきながらペンを走らせていたかと思うと、力尽きたようにふと虚ろな目でカメラを見つめてくる。

足音で人を察知するしかない状況に彼女は置かれていると思いきや、部屋には大きな窓がある。雪が降る日が続くと彼女は窓から景色を眺め、子どもたちの笑い声には外から見えない窓のすぐそばの部屋の角に立ち、聞く。
笑い声に少し微笑みながらも彼女は何もないはずの右下の床を見つめ寂しそうな表情を見せる。
彼女は自分を見つめる。窓を鏡として用い、自分の顔や体を確認するのだ。

外の世界に出ると、彼女は自己を主張するというより観察する立場、相手にとっての自分という立場をわかっている。
出会った男の身の上話をただ聞くだけで何も口出ししない。彼の性欲についてもただ従うだけであり、家族の愚痴など彼が髭を剃る様子もそばで見つめるだけである。

ある女性と肌を重ねるシーン。肌がぶつかり合う音、シーツが擦り合う音、吐息、ハミングのような喘ぎ声が無機質に響き渡る。会話はなく、ただ相手を求め貪るような動物的な行為に徹している。

常に孤独と向き合う彼女。何かが満たされても根本的に心までもが満たされるわけではない。
Ricola

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